~ウェルビーイング新時代の幕開け (well-being 3.0)~
健康増進のための様々な施策やメンタルヘルスプログラムはもちろん、昨今の「働き方改革」もウェルビーイング施策といえるでしょう。実際、極めて広範な領域に関わるがゆえに「雲を掴む話」にならないよう、まずは全体像から見てみましょう。
企業は従業員のウェルビーイングに関心を払うべきか?
もちろん、答えはイエスです。身体的、精神的、社会的に良好な状態にある従業員は生産性の向上につながるからです。しかし企業が提供するウェルビーイング施策に対する評価には、企業と従業員との間で大きなギャップがあります。GBA調査の設問「会社の取り組みは自分が健康的な生活を送るために役に立っている」に対して、肯定的な回答をした従業員は、全体で3割程度に過ぎません(図表1)。一方、企業を対象とした別調査の同様の設問に対し、5割の企業が肯定的な回答をしています。特に日本では健康経営を標榜する企業が増えているにも関わらず、企業・従業員とも低い評価となっています。
図表1: 企業は自社のウェルビーイング関連の取り組みを過大視する傾向がある
また、経年で日本の結果を見ると、年々否定的になっていることが分かります(図表2)。これはグローバルでも同様の傾向があり、ウェルビーイング施策にいち早く取り組んでいる米国においても、2011年のGBA調査では41%であった従業員満足度が2017年調査では32%に下落しています。
図表2: 企業が従業員の健康やウェルビーイングに投資しているにも関わらず、企業の取り組みやサポートに対し、従業員からの評価は向上していない
何故、企業のウェルビーイング施策は従業員からの評価が上がらないのか?
端的に言えば、従業員が望んでいるのは、企業が提供する健康増進プログラムに参加することで得られる奨励金やポイントではなく、各人のニーズに即した真に意味のある制度やツールであるということに、企業が応えきれていないのです。従業員のウェルビーイングを4つの側面から全体的に捉えるアプローチにシフトする時期なのです(Well-being.3.0)。
企業は、自社の従業員のウェルビーイング施策を考えるとき、従業員一人ひとりの状況が異なることを理解し、それぞれが掲げる目標に対してどのようにサポートできるかという視点に立つことが重要です。
Well-being3.0へ向けて、どのように企業はシフトチェンジするか?
トータルリワードの他の分野と同様、企業はよりフレキシブルでカスタマイズできるアプローチにシフトしつつあります。つまり、従業員がさまざまなウェルビーイングメニューから自らのニーズに合致したプログラムを選択できるものが増えてきています。より個人に則した総合的なアプローチの展開に際し、企業は次の6つのステップを取ることが有効です:
総合的なアプローチで取り組むことにより、ウェルビーイング施策を単なるキャッチコピーから、従業員に必要なソリューションへと変えることができます。個々の従業員をサポートし尊重する文化を作り出し、従業員を長いスパンでサポートしていくことが大切となります。時の経過とともに従業員のニーズは変化します。その変化に対応して進化するプログラムを設計することが重要ポイントです。また、全従業員を対象に制度を見直すのではなく、一定の従業員グループ(例えば、定年延長による60歳以上のシニア従業員)に対する福利厚生にターゲットを絞ってプログラムを考えるときに、4側面からのウェルビーイングアプローチは効果的といえるでしょう。
最後に。ウェルビーイングの重要性
多くの企業が従業員のウェルビーイングの重要性を理解しており、弊社のGBA調査によれば、従業員のウェルビーイングが高い企業ほど、業績がよいだけでなく、エンゲージメントの高い従業員が多く、ストレスを強く感じている従業員は少なく、欠勤や不完全な就労による労働力の問題が少ないなど、ビジネスにより良い結果をもたらしています。
低い失業率や少子高齢化する労働人口を背景に人材獲得がより難しくなる現在、ウェルビーイング施策は、人材獲得・リテンションに極めて重要であり、また職場の生産性や企業の業績に直結する影響を与えます。さらに活発で経済的にも情緒的にも安定しており、社会との繋がりを維持している従業員の存在は、企業にとって強力な労働力になるだけでなく、世の中のより良い変化の推進力になるはずです。企業にとって高いハードルではありますが、努力し挑戦する価値は大いにあるのです。
(*1) 隔年でGlobal Benefits Attitudes Survey(以下、GBA調査という)を実施しており、2017年は、日本を含む世界22か国の中・大規模企業で雇用されている31,000人を対象に実施した。