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M&Aシナジー実現のためのチェックリスト

執筆者 中村 健太郎 | 2016年7月20日

最近今までに増して以下のようなお問い合わせを頂くことが多い。
Mergers and Acquisitions|Employee Experience
N/A
  • 数年前に買収した会社に何も手をつけられていないのだが、どうしたら良いだろうか
  • 買収した会社の業績が思っていたとおりに上がらない
  • 買収から数年経ったら元の経営幹部が退職してしまった
  • 既存の拠点と買収した会社を統合したいのだが、社風も従業員の属性も全く異なる両者を一緒にして大丈夫だろうか

これまで多くのM&Aが行われてきたが、様々な調査、研究によると成功したと言える案件は必ずしも多くない。特に海外企業の買収となると文化や風習の違いなどもあり、難易度は格段に高いと言われている。実際に多くの買収を経験した企業の方々にお話しを伺っていると、「明らかな失敗という訳ではないが、買収当初に予定していたようなシナジー創出に対する手が打てていない。買収から数年経って株主や社内からも買収の効果を疑問視する声も上がり始めている」といったケースが非常に多いようである。

では何故手が打てていないのだろうか。これには様々な理由があるだろうが、典型的なものとして買収した会社の経営幹部に対する遠慮であったり、新たな施策が失敗することへのリスク回避的な考えなどが背景にあるだろう。特に海外企業に対しては、文化や風習の違いなどの面から変化に対する影響の予測が難しく、なかなか踏み出せないといったことが多いようである。

買収目的に応じた施策

さて、買収した会社を生かす為には、どのような策を講じる必要があるのだろうか。この問いに対しては、買収の目的や置かれている状況によって様々であるが、分かりやすいものとしては以下のようなものがある。

  • 事業規模の拡大:既に事業展開を行っている地域・事業について、競合会社を買収するようなケースであれば、既存拠点・事業との統合を早期に進めてシナジーを実現することが求められる。その場合、例えば組織や人材の統合、それに伴う人事諸制度の統合・移行や、場合によっては人員の適正化、といった様々な施策を検討することが必要となる。
  • 補 完:自社が展開していない地域・事業の買収の場合には、基本的には買収した企業の基盤を生かして事業を継続することになるだろう。その場合には、買収企業の経営幹部のリテンションや、本社グループの意向に沿った経営を担保するためのガバナンスを適切に効かせるような対応が必要となる。また、お互いの製品のクロス-セルを行うような場合には、それを促進するための評価・インセンティブの見直し等も必要となるだろう。

組織・人事面のチェックリスト

上記のように買収目的によって課題や必要な施策は様々であるが、組織・人事の観点で多くの買収案件に共通して生じる課題とそれに対する施策がある。代表的なものとして以下がある。

<< リーダーシップ面 >>
  1. 買収した企業の経営幹部に、今後のシナジー創出を含めた事業戦略の立案・実行を任せるにあたり、必要となるスキル・行動/コンピテンシーが明確化されている
  2. 現在の経営幹部が買収後の事業戦略立案・実行を担えるだけのスキル・行動/コンピテンシーを有しているかの評価が行われており、個々の幹部に対するディベロップメントの施策を講じている
  3. 将来の経営幹部の候補者が明確化されており、サクセッションプランや育成計画の作成・実行が行われている

    << ガバナンス面 >>
  4. 買収企業の経営幹部の決裁権限や本社への報告・承認事項が明確化されている
  5. 決められた決裁権限や報告・承認事項が徹底されており、本社に必要な情報が共有されている

    << 組織・人材・人事制度面 >>
  6. 各社・各拠点毎の人材の基礎的情報の把握ができており、組織再編の検討を行うための情報が揃っている
  7. 適切な人員構成・人件費水準が確保できている
  8. 買収後の事業戦略と連動し、またシナジーを促進するような評価、インセンティブ体系が整備されている

    << 企業文化・風土・従業員のエンゲージメント(モチベーション)面 >>
  9. お互いの企業文化・風土・従業員の理解が進んでおり、企業文化・風土等の違いによる問題が生じていない
  10. 今後、組織・人材の統合を予定している場合、企業文化・風土の統合に伴う課題や対策の検討が進められている
  11. 買収企業の従業員が買収に対して理解・納得しており、エンゲージメント(モチベーション)の水準も維持できている

遅かれ早かれシナジーの追及を進めていくためには組織・人材面の共通化や統合を進めていくことが求められるが、その際には上記のような施策を早い段階から講じておくことが重要となる。過去に買収された会社をご担当されている方々におかれては、今後、買収後施策の検討をされるにあたっては、上記のような内容をチェックリストとして確認頂き、必要な対策をご検討する際の参考にして頂ければ幸いである。

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