危機下で表出する振舞い・潜在的なリーダーシップリスク・生まれもった性格適性を、客観的に見極める
経営者候補者となるエグゼクティブは、平時においては皆「Strong Performer」といえる。会社で一二を争う実績を上げ、かつ人望も厚いゆえに候補者に選任されるわけである。但し「経営者」指名において見極めるべき項目は多岐にわたり、一般的な人事考課評定ではカバーしきれない項目も多い。例えば、①強いストレス下においてどの程度平時と同様のパフォーマンスを発揮できるか、②危機に際して表出する生まれもった性格(生来属性)は当該経営職の要件に照らして適性の高いものであるか、③潜在的なリーダーシップリスクはどの程度か、という点である。欧米の後継者計画(サクセッション・プラン)においては、これらは既に標準項目として評価対象となっている。これらを中立的かつ客観的に評価し、経営者指名におけるリスクを最小化することが、会社の成功に大きく寄与すると考える。
経営者の選任基準には諸説あるが、一例として上記項目を含めた私共の整理の仕方をご紹介したい。
上記の選任基準を縦軸に、その評価方法を横軸におき、それぞれの評価可能レベルを三段階(十分評価可能、評価可能、評価困難)で示したものが下表である。
上表の横軸に示した評価方法のうち、経営者指名における第三者評価手法として代表的なものが、「パーソナリティ検査」「行動探索型インタビュー」「360度リーダーシップ調査」の3つである。社内の人事考課評定に加え、これら3つの評価手法を組合わせることで縦軸の基準項目をほぼ網羅できることがお分かり頂けるだろう。それぞれの具体的な内容は下記のとおりである。
先に示した3つの問いは、これら評価手法によって精度高く見えてくる。①強いストレス下において、どの程度平時と同様のパフォーマンスを発揮できるか、②危機に際して表出する生まれもった性格(生来属性)は当該経営職の要件に照らして適性の高いものであるか、については、パーソナリティ検査結果で浮き彫りになる。また、③潜在的なリーダーシップリスクについては、360度リーダーシップ調査が大きく貢献するところである。
先述のとおり、経営者指名における評価手法にはいずれにもメリット、デメリットがある。ゆえに指名を担う際には、複数の手法を組合わせることでデータポイントを増やすこと、各手法の結果を包括的かつ慎重に分析、考察、議論した上で結論を出す必要がある。
経営者指名に際して、株主を始めとするステークホルダーの視点に立ったときの要諦は、一連の指名プロセスにおける中立性、客観性、透明性の担保である。恣意を排した公明正大な指名であることを内外に示すことは、当該企業に対する信頼に繋がる。また社外取締役の視点に立つと、候補者それぞれについて質・量ともに十分な人材情報が提供され、それらを踏まえた透明性の高いプロセスを経て指名が行われるということが重要である。先に示した各種アセスメント手法を組合せ、それらを得意とする第三者評価機関と協業することで、中立性、客観性を担保しながら、より多面的な評価を実現し、経営者指名を成功に導いて頂きたいと切に願っている。