インド東部アンドラ・プラデシュ州の「韓国LGポリマーズ」の化学工場で、5月7日午前3時ごろ、5,000トンのタンク2基からガスが漏えいしました。少なくとも現在までに13人が死亡、800人近くが体調不良により病院に運ばれ、また工場の半径5㎞以内の約4,000人が避難を余儀なくされました。
同工場は、新型コロナウイルス対策のロックダウンによって無人となっており、インドにおいて新型コロナウイルス対策のロックダウンを開始した3月24日から閉鎖され、この時期に操業再開する場面で発生しました。同州の環境汚染規制当局はBBCに対して、漏れたのはスチレン(合成樹脂)で、通常は冷凍されていたとコメントしています。
事故原因は未だに調査段階にありますが、ロックダウンからの解除に備えた運転再開の準備過程でガス漏洩が発生しました。同工場では、保管されている各種材料の特性(可燃性、沸点、引火点など)に応じて、化学物質の温度と圧力のパラメーターを厳密に監視する必要があり、ロックダウン中、熟練した労働者のみがメンテナンス監視する必要がありました。しかしながら、事故当時は正規または契約社員を含む要員不足のため、このパラメーターを維持できなかった可能性があり、更に、必要とされていた24時間体制での監視がされていなかったという報道もされています。
LGポリマーズによると、工場はロックダウンを受け操業を停止していたが、保守点検作業員は常駐しており、事故当時は夜間シフトの作業員がガス漏れを発見したとコメントしています。現時点では、その際、タンク内で、何らかの理由で発熱反応が発生し、そのためスチレン蒸気が漏出したのではと想定されています。
尚、事故発生当時、工場の近くに住む従業員が、工場を再開するため現地当局からの許可を得なければならなかったものの、結果として当局からの許可を求めなかったか、或いは許可を得ていなかった可能性もあること、また、異常検知アラーム設備はなく、工場は操業再開に当たって適切な作業標準(SOP)を守らず作業を行ったこと、またタンクの冷却系統が機能しなかったとの報道もあり、今後更に調査の結果が待たれます。
今後、各国ごとにロックダウンからの緩和、解除の動きが個別に進む、或いは感染度合いによってはロックダウンの再開となる可能性もあります。それぞれの段階において、各製造拠点においては、従来の安全確認手順をより注意深く検証し、見直しする必要があります。今回のようなインシデントを回避するには、以下をお勧めします。
なお、詳細は「一時的に遊休状態の 建物・工場・建設現場の保全~休業中の施設や建設現場のリスク管理について」(PDF)をご参照ください。
2014年2月、WTWシンガポールオフィスにてJGPGアジアを設立、APACにおけるリージョンリーダーとして同組織を運営。現在、約450社に上る日系ビジネスを統括。保険会社における引受部門、多国籍企業における保険マネージャー、国際保険ブローカーとして23年の経験、また14年に上る欧州・シンガポールでの勤務経験を持つ。