新型コロナウイルス(COVID-19)は、私たちの働き方や働く場所、さらには仕事の本質に根本的な変化をもたらした。さらに、新型コロナウイルスが収束した後の世の中において、消費者や従業員の価値観も大きく変化することが確実とみられている。
在宅勤務/テレワークという働き方は、今後もさまざまな業界やセクターにわたり継続される見通しで、中にはTwitterやSquareのように、従業員が無期限に在宅勤務を認めることを発表した企業もある。ウイリス・タワーズワトソンが企業を対象に実施した最近の調査では、新型コロナウイルス収束後には、2019年比でおよそ5倍もの従業員が在宅勤務をすることが推定されている。
また、回答者の73%がオフィスに戻りたくないと考えており、在宅勤務という働き方が従業員に好意的にとらえられていることも分かる。さらには、オフィスで働く社員に比べ、よりポジティブなエンプロイー・エクスペリエンス(EX)を実感しているという興味深い結果も報告されている。
これらの結果は、オフィスという場所の必要性と目的そのものに疑問を呈し、産業革命以降、当たり前とされてきた「オフィスで働く」という慣習を見直す大きなパラダイムシフトを迎えたことを示唆している。これは組織にとって「オフィス=働く場所」という概念を見直すという新たな課題であると同時に全く新しい機会ともとらえられる。
Afterコロナの世の中に向けて、働く場所はどのよう変わっていくべきなのか。世界規模のパンデミックという現代社会が体験したことのない出来事とその先を見据えた対応方法に関する絶対的な正解は、あいにく存在しない。しかし、組織が変化に適応し、機敏な対応をする上で考慮すべき重要なポイントはいくつか考えられる。
突如発生した危機への対応から、ある程度の安定を取り戻しつつある転換期にいる今、組織にとって重要となるのは、ビジネスの持続的な成長を確保することと良いエンプロイー・エクスペリエンス(EX)を提供することの両立である。そのためには、従業員の視点に立って、今までとは異なる環境や方法で働くという変化が従業員のエンプロイー・エクスペリエンスにどのような影響を与えるのかを十分に認識する必要がある。
このような変革時に下す決断は、従業員や消費者、そして投資家などのさまざまな利害関係者へのメッセージ発信の機会となる。今月からお届けする「Transform to Perform(変革実行とその先へ)シリーズ」では、ウィリス・タワーズワトソンのHigh Performance Employee Experience(通称 HPEX)を用いて、昨今注目されているエンプロイー・エクスペリエンスの観点から如何にして組織は変革を実現できるのかについてご紹介する。
本シリーズでは、変革の中でも高い業績をあげる組織やリーダーたちの学びやベストプラクティスをご紹介する。従業員のエンゲージメントと生産性を向上するために重要となる仕事の再設計に関する考え方、働き方・職場環境の変化がもたらすトータルリワードへの影響など、この変革の時期に組織に求められる考え方を多面的に考察したい。
南洋理工大学 (NTU) 卒業後、外資系PR会社を経て2019年入社。戦略的PRのバックグラウンドを強みとし、M&Aにおける企業の文化統合や、人事制度改定、組織変革などチェンジ・マネジメントおよびコミュニケーションに関する戦略計画や実行支援を行う他、従業員エンゲージメント向上や組織開発に関連するプロジェクトにも参画。