ウイリス・タワーズワトソンが世界経済フォーラムと共同で発表したホワイトペーパーにおいて、新型コロナウイルスという危機を乗り越えるために、Chief Human Resources Officers(CHRO)やビジネスリーダーにとってカギとなる4つの行動原則が明らかになった。
これらの行動原則に基づいて、リーダーはどのようにビジネスやエンプロイー・エクスペリエンス(EX)の課題に対応していくべきなのか、が問われている。
弊社のグローバル規模の知見や研究によると、「理想的なリーダー像」は時代と共に少しづつ変化してきていることが分かってきた。
従来のリーダーには、確立された方法論や、実践的な経験で培われたスキルと知識を活かして、ビジネスに関する問題を解決することが求められてきた。しかし、近年では下記のような役割がリーダーには重要視されてきている。
組織に大きな変化が訪れる時、リーダーはそれを主導する立場にある。その際に、将来のビジョンを明確化し、変化や不確実性を受け入れながら、新しい課題にも果敢に取り組む力は、特に重要な資質となる。未来のリーダーは、ただ物事を実行に移すだけでなく、求められる成果を創出するまでが役割となっていく。
リーダーには、問題が発生した際に即座に対応し、危機的状況においても的確な意思決定を下すことが求められる。プレッシャーを上手くコントロールしながら、冷静かつ迅速な意思決定を行い、大きな決断にも責任を持つことで、リーダーとしての確固たる信念を貫くことも、危機的状況下では重要な役割となる。
リーダーは、今以上にウェルビーイングの重要性を強く認識し、個々の従業員のニーズに対応することだけでなく、組織のロールモデルとして他者に対して思いやりや信頼をもって接することが求められる。急激な変化の状況下においては、従業員の意見に傾聴し、チームの立場から物事を考える共感性も重要だ。
ビジネスとして成長するために、リーダーは顧客の潜在的なニーズを特定する必要がある。具体的には、高い品質を維持しながら、納期を守ることや、迅速に物事を遂行すること、計画性をもって実行に移すこと、基準を守るために細部まで注意を払うことなどが求められる。
このように、リーダーに求める資質の変化にあわせ、組織はリーダーシップに期待する要件や人材開発に関するアプローチの再考が必要となる。
「組織の長期的成長のためには、リーダーに求める能力を再定義する必要があるのか?」
「そもそも、マネジメント人材の開発戦略全体を見直す必要があるのか?」
「このような大きな変革を組織に落とし込むには何から手をつければ良いのか?」
これらの質問に対する答えとして、以下のようなアプローチが考えられる。
01
今、そして未来をリードするためにカギとなるリーダーの資質を優先づけ、将来の組織のビジョンとそれを主導するリーダー像を明確化する。そしてそのビジョンに向かって、組織一丸となって取り組む重要性について共通認識を醸成する。
02
様々な視点から、事業を総合的に分析できるチームを結成し、組織のリーダーシップについて今後想定されるリスクを洗い出す。そこで得た洞察に基づいて、組織としての今後のリーダーシップの育成・確保のための戦略の方向性を検討する。
03
より良いエンプロイー・エクスペリエンスを構築するうえで、リーダーとしてのミッションを明確化し、現状と将来の組織像を対比させながら、自社のエンプロイー・エクスペリエンスにとって必要な要素、重視すべき要素、そして卓越した組織に成長するための道筋を考える。
その際に、「組織が直面するEXにおける課題」と「それらの課題を解決するために必要なリーダーとしての資質」を検討することが重要となる。現状の課題にしっかりと照準を合わせ、的確に支援することで、リーダーは持続可能性のあるビジネスと強いエンプロイー・エクスペリエンスの両方を成立させることができる。
本稿では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い組織に「変革」が求められている今、リーダーに期待される役割や要件が見直されつつあるという潮流から、「将来のビジネスのかじ取りを担うリーダー」を開発するためのアプローチについて論じられている。
コロナ禍によって、将来の不確実性が高まっている中でも、リーダーは組織として成長を遂げるためのビジョンを描き、従業員に共有していくことが求められる。そのため、Hamishが挙げるリーダーに求められる4つの役割(チェンジエージェント、危機管理者、ファシリテーター、カスタマーチャンピオン)は今後さらに重要度が増してくると考えられる。
また、働き方の急速な変化において、コミュニケーションの重要性も再認識されている。今まではオフィスで日常的に交わされてきたコミュニケーションが、リモートワークによって希薄になっている状況で、自身の部下の仕事内容や心身の状況把握、チームの人材開発、さらには従業員の自発性や動機付けを行うためには、リーダーから今まで以上に積極的なコミュニケーションを行う必要がある。
リーダー自身もニューノーマルな働き方に適応するべく四苦八苦している中、コミュニケーションへの意識付けをただリーダーに求めるのではなく、コミュニケーションを活発化させるため、人事からも働きかけが必要だ。こちらについては、次回の「Transform to Perform(変革実行とその先へ)」シリーズにて、ご紹介をさせていただく。
南洋理工大学 (NTU) 卒業後、外資系PR会社を経て2019年入社。戦略的PRのバックグラウンドを強みとし、M&Aにおける企業の文化統合や、人事制度改定、組織変革などチェンジ・マネジメントおよびコミュニケーションに関する戦略計画や実行支援を行う他、従業員エンゲージメント向上や組織開発に関連するプロジェクトにも参画。