より多くの企業が持続可能な人的資源のマネジメントに力を入れる中で、エンプロイー・エクスペリエンス(従業員体験 - 通称EX)の重要性がますます明らかになってきました。
持続可能性は環境的な要素を指すことが多いですが、個人、チーム、企業、社会のパフォーマンスにも当てはまります。持続可能な人的資本のマネジメントを効果的に導入することで、人材の維持、ウェルビーイング、レジリエンス、エンゲージメント、生産性を向上させることができます。
組織が持続可能な人的資本のマネジメントを実践するためには、ビジネスと人材両方のニーズを考えるためのフレームワークが必要です。そのフレームワークを「エンプロイー・エクスペリエンス」といいます。
最適なエンプロイー・エクスペリエンスは、有形のもの(報酬・福利厚生等)から無形のもの(企業文化等)を通じて、差別化された従業員への魅力的な価値を提供したものでなければなりません。本稿では、無形のものの一つ、インクルージョンとダイバーシティがどのようにエンプロイー・エクスペリエンスとそれよりも広義な人的資本マネジメントに貢献するかに焦点を当てます。
インクルージョンとダイバーシティは、従業員や非正規雇用者のエンプロイー・エクスペリエンスに不可欠な要素です。現在の市場では、多くの従業員はインクルージョンとダイバーシティに関して下記のような期待を持っています。
このような期待に企業がインクルージョンとダイバーシティの取り組みで応えることで、従業員のエンゲージメントは高まり、革新的なアイデアが生み出されて、様々なビジネスニーズに柔軟に対応できるようになります。
従業員以外のステークホルダーもインクルージョンとダイバーシティの取り組みに期待しています。
しかし、インクルージョンとダイバーシティのあるべき姿を実現するのは難しいことです。現時点で見受けられる課題の例として、多くの組織の上層部では未だに多様な人材で構成されていません。また、多くの従業員が会社内で自然体でいられないと感じています。更に、身体障害者や神経多様性な人々(注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム、ダウン症、ディスレクシア、その他の神経疾患を持つ人々など)が十分雇用できていません。
上記のような課題をあるものの、インクルージョンとダイバーシティに力を入れている企業は増加しています。雇用慣行、昇進プロセス、福利厚生プログラム、賞与決定におけるバイアスを排除する取り組みを行っている企業は、当社の調査でも増加傾向にあります。
インクルージョンやダイバーシティへの取り組みを継続的に進めるために、企業は何をすればよいのでしょうか。成功要因は、組織としてやらなければならないことと、自社のやりたいことのバランスを取りながら、統合的なアプローチで独自の戦略を構築することです。統合的なアプローチでは自社の事業領域、現在の労働力、報酬(福利厚生を含む)などを検討しながら、下記の対策を講じる必要があります。(本記事では、日本のコンサルタントにより詳細に段階を説明しています)
上記に対して答えを見つけることで今後の進むべき道へのロードマップを描きます。ロードマップとは、戦術的な行動計画で構成されたプロセスの全体像を示したものであり、通常は数年間にわたってまとめられ、期間中に実行状況の測定・モニタリングがなされます。
行動計画を成功させるために、特に2点認識することが必要です。まず、一つのプログラムやプロセスを実施するのではなく、真の変化をもたらすための複合的なアプローチであり、進歩を遂げるには時間がかかります。また、実行の責任は一部門にあるわけではありません。成功している組織は、ビジネスの全ての機能を巻き込み、リーダーのコミットメントを確保する必要性を認識しています。
弊社の「トータルリワードの近代化と報酬の適正化」に関する調査によると、主要な企業は具体的に下記の取り組みを実施しています。
エンプロイー・エクスペリエンスを中心に据えることで、企業は持続的な成功のために、インクルージョンとダイバーシティが反映された労働環境や、人材を確保することができます。