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特集、論稿、出版物 | 人事コンサルティング ニュースレター

エンプロイー・エクスペリエンス(EX) - 企業の一員であることの“ストーリー”を届け続ける

執筆者 岡田 恵子 | 2022年1月12日

新年を迎え、心よりお慶びを申し上げます。
旧年中は本ニュースレターを手に取っていただき、また弊社業務に関しまして大変お世話になりましたこと、改めて御礼を申し上げます。
2022年が、皆様一人一人にとって健康と希望に満ちた年となりますことを祈念する次第です。
Work Transformation|Employee Experience
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2021年は、長引くコロナ禍の中で、同僚や上司、お客様や取引先などと日々顔を合わせ、接点を持ちながら仕事をする、という、これまで当たり前だった“会社で働くこと”の意味について、改めて考えさせられる年でした。

一つの組織に関わり、そこに属して仕事をすることは、多くの人にとって、20代から60代(人生百年時代、もっと延びるかもしれませんが)という人生の大半の時間を、組織で起こる様々な場面や変化を経験する中で、いろいろな気持ちや感情を積み重ねながら、組織と共に生きることを意味します。こうした瞬間の経験の積み重ね=エンプロイー・エクスペリエンスが、私ども、ウイリス・タワーズワトソンの2022年のキーテーマです。

企業は顧客、消費者、社会に、その製品やサービスに触れ、活用することで、他では得られない効果や効能と共に、喜びや癒し、安心に満ちた時間と経験を提供することを目指します。そして、そうした“ならでは”の経験の積み重ねが、企業のブランド価値や企業価値を高めることにつながる、という循環は、”カスタマー・エクスペリエンス”という概念のもとに既に検証されています。

従業員意識調査結果と企業の将来的な業績との関係に、現時点で最も強い関係をもたらすものが、従業員のエンゲージメントであり、弊社ではこれを「持続可能なエンゲージメント」と定義しています。そして、従業員の高いエンゲージメントを、従業員の内側から生み出させるものが、組織と共に生きる時間の中での様々な場面や瞬間に出会う体験とそこに伴う感情の積み重ねである“エンプロイー・エクスペリエンス”(従業員の経験、以降EX)だと、弊社は継続的に実施している高業績企業に関する研究の中から、定義づけています。

企業は既に多くのものを従業員に提供しています。企業目的、目標、あるべき姿や風土。こうした企業として目指す方向に舵を切り、従業員がその方向に目を向け動機づけられることを念頭に、様々な業務の仕組みやプロセス、そして人事のプログラムが設計、導入されます。そしてそれらの仕組みやプロセス、プログラムが、企業の目的や目標に即して設定された指標、KPIに沿って運用されているかどうかが確認されます。 

それでは、そうした仕組みやプロセス、人事の諸プログラムは、企業を目標に向けて動かす推進力となるべき従業員、その組織と共に人生を歩んでいる従業員に、企業が目指す“カスタマー・エクスペリエンス”と同様な、その組織にいる“ならではの”EXにつながっているのでしょうか。たとえば、新しいことに挑戦するドキドキ感、わくわく感、どんなに機械化されても変わらないお客様を考える時間、難しい選択を迫られた際によりどころとなる組織の指針や理念があることの意義の実感、失敗の悔しさとそこから学ぶことを促す上司や同僚のありがたさ、そして、顧客、消費者、社会から自分が関わっている製品やサービス、あるいは企業自身が喜ばれている、という実感。一人一人の従業員が、その組織で過ごす大事な瞬間に、企業が既に用意し、従業員に提供している諸々のプログラムや仕組みたちは、どのようなEXを生み出しているのでしょうか。

時代が変わった、制度やプログラムを変える必要がある。本当にそうでしょうか。今ある様々なプログラムやプロセスを、従業員の体験やそこで生じる感情の集積、という観点からレビューしてみてはどうでしょうか。実は、制度やプログラム、というコンテンツ自体に問題があるわけではなく、それらが従業員の暮らしや人生のどのようなタイミングで、どのような形で、どのような順番(シークエンス)で届けるのか、という視点や発想が欠けていたために、大事な時に届いていない、気づかれずにいる、ということの方が多い、というのが実感です。

制度や仕組みの作り手にとって、その制度や仕組みが全体の理念や目標と整合的であるのか、合理的な運用がなされるのか、といった検証は極めて重要です。同時に、そうした制度や仕組みを従業員のエンゲージメントに結び付け、組織を持続的な成長軌道に乗せていくことを考えた際には、そうした仕組みや制度が、従業員にどのような経験をもたらしているのかを検証することが重要であると考えます。制度やプログラムの運用という一時点が、その従業員の人生の所属企業での時間という継続する流れの中でどのような影響や意味を持ち、それが次の経験にどう作用しうるのか。それは企業がこうありたい、と思うものと整合的なのか。一段深く、人事のガバナンスを論じる契機を投げかけられるのではないか、と考えています。

2022年、私どもウイリス・タワーズワトソンの人事組織領域のコンサルティング部門、タレント&リワードは、EX(エンプロイー・エクスペリエンス)ビジネスとW&R(Work & Reward)ビジネスに分化します。W&Rビジネスは、経営者報酬やボードアドバイザリーを含む、人事・人材に関するプログラムやプロセスの設計、導入、運営という観点から、人と組織の持続的な成長を支援します。そしてEXビジネスは、W&R領域の人事・人材関連の諸制度に加え、退職金、福利厚生(Employee Benefit)、保険など、企業が提供するあらゆるものを、従業員にとってのより良いEXにつなげていくための、諸々の仕組みやプログラムのレビュー・検証、データ解析、EXへの意味合いの抽出、よりよいEXを実現するためのコンテンツとシークエンスを考え、それを最適なツールで提供することを目指します。

皆様のEXを共に考え、模索し、新たなEXの実感を貴社に届けられるパートナーとなれますよう、一同、尽力する次第です。2022年、ウイリス・タワーズワトソンのEXビジネスをどうぞよろしくお願い申し上げます。

執筆者


マネージングディレクター、EXインターナショナル・リーダー 兼 
タワーズワトソン株式会社 取締役
Employee Experience(EX)

マッキンゼー・アンド・カンパニーのコミュニケーション・スペシャリストを経て、WTW入社。従業員エンゲージメント、コミュニケーション、チェンジマネジメントなどの領域に20年以上のコンサルティング経験を持ち、寄稿・インタビューなど多数。EX(Employee Experience)ビジネスのInternational Geography(アジア・豪州、中東、中欧・東欧、南米)のリーダー。


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