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特集、論稿、出版物 | 人事コンサルティング ニュースレター

ESGとエンプロイー・エクスペリエンス(EX)が組み合わさることで生み出される力

執筆者 Megan Leon Sarah Scalici Charles Huff 岡田 恵子 | 2022年10月27日

今こそ、人事部門が、ESG(環境、社会、ガバナンス) をエンプロイー・エクスペリエンス (EX) に結び付ける好機です。
Employee Engagement |ESG and Sustainability|Employee Experience
ESG In Sight

今日、優れた人材を惹きつけ維持することは、事業の成長上、絶対不可欠であることを超えて、企業がより多くのことを実現できる、ということを意味します。 なぜなら、優秀な人材を確保することは、明確なパーパス(企業目的)をはっきりと伝え、従業員に自社の活動に主体的に参加し、この組織にとどまり、最善を尽くしたい、という刺激(インスピレーション)を与え続けることを意味するからです。 ESG(環境、社会、ガバナンス) 原則とエンプロイー・エクスペリエンス (EX) の間の基本的な関係を認識することにより、人と仕事との本質的な結びつきを築くことができます。

企業としてのESG におけるプライオリティの重要性は、経営会議メンバーや経営幹部にとってだけでなく、企業が社内におけるESGの優先事項を定義し、企業行動を評価するうえで、ますます重要になっています。 研究によると、ESGの社内における取り組みをリードする企業は、より良い財務結果を出していることが検証されています。 EX の観点から見ると、ESG の最大の原動力は従業員です。従業員は時間とエネルギーを会社に投資するからです。そのため、企業が、地球を保護し、社会的利益を促進し、倫理的で包括的な慣行をサポートするために行っている ESG へのコミットメントと行動を、具体的に示すことが重要です。

パンデミックの間、長期的な取り組みとして継続的に、社会的責任への取り組みを行っている企業の従業員は、自分の会社が「とても働きやすい会社である」と回答する割合が、一般的な企業の 15.6 倍にもなっています。また、25 歳から 34 歳の従業員の 61% が、働く場所を選択する際の重要な検討項目として、「持続可能性」への取り組みを挙げています。 これは、長期的な視点で持続可能な成長に焦点を当てることが、優れた従業員を惹きつけ、エンゲージさせ、定着させる上で、明らかな優位性をもたらすことを示しています。

EXの差別化要因としてのESG

EXの向上は企業にとっての最優先事項です。 WTW 2021 Employee Experience Survey によると、92% の組織がEX の強化を今後 3 年間の優先事項であると予想しています。 この数字は、パンデミック前の 52% から増加しています。 しかし、パンデミック後の働き方の課題に対処するためのEX と事業の統合された戦略や、タレントマネジメントの明確なプライオリティを持っている人はほとんどいない、というのも事実です。

EX戦略、ビジネス戦略、ESGイニシアチブの間の点を結び付けて、従業員が組織に貢献することの重要性を再認識することが重要です。

従業員は仕事の意味と、仕事を通じてつながりを持つことを求めています。 仕事の意義と仕事を通じたこのつながりが、最終的にEXを活性化させます。 ESG のレンズを適用すると、強い目的意識と誇り(ESGの優先事項をサポートするために社員が行う有意義な仕事、ESGの目標を推進するためのつながり、その結果として社員が見る利益)を通じて、EXを向上させることができるのです。企業がこれを正しく理解すれば、従業員もまた同様です。

  • より多くの仲間がいると実感できる、という報酬を得られる
  • 仲間の声を共有できると感じられる
  • 仲間のウェルビーイングやそれ以上のことがサポートされていると感じられる

あなたの従業員のEX に ESG を組み込む

ESG は、業績や投資に関連する指標であるだけではありません。 それは:

  • パーパスに溢れたエンプロイー・エクスペリエンスを牽引する
  • 適切なリーダーの行動を喚起する
  • ポジティブな企業イメージを確立する

EXにESGを組み込んでいる企業は、従業員が定着して最高の仕事をしたいと思うようになり、投資に対する見返りを得ることができます。また、組織の価値観を共有する新たな人材を獲得することができます。

ESGの原則は従業員の経験にとって重要であるため、人事部は従業員とのつながりを作り、組織が優先事項に基づいて行動するうえで不可欠な役割を担っています。気候変動やリジリエンス、ウェルビーイング、多様性、公平性、包括性(DEI)の取り組みの中心にいるのはまさに従業員であり、倫理的なビジネス慣行を示すのも従業員であることを認識することが重要です。人事部は、計画、プログラム、ビジネス慣行がESGの優先順位と一致することを確認するだけでなく、従業員が取り組みをサポートできるようにする必要があります。

では、どのようにして従業員を巻き込み、これらの優先事項に参加させていけばよいのでしょうか。ここでは、そのための5つのヒントをご紹介します。

  1. 01

    説得力のある ESG の説明を作成する

    コミットメントを大胆に定義し、EX に関連して、あなたが誰であり、何を支持するかを明確に伝えます。現在の ESG 戦略を検討し、従業員の洞察を収集し、従業員の共感を呼び、価値提案に沿った本物のメッセージを作成します。

    自社のコミットメントを大胆に定義し、EXに関連する自社の姿や立場を明確に伝えましょう。 現在のESG戦略をレビューし、従業員のインサイト(声)を集め、従業員が共感でき、自社の価値提案と一致する、貴社ならではのESGメッセージを開発します。

  2. 02

    意味のあるつながりを作る

    ESGとは何か、なぜそれが重要なのか、そして当社の従業員であることの意味にどのように影響するのかについて、組織内での認識を高めます。年間を通じて、また入社から退職に至る従業員のキャリアにおける重要な場面で、ESGのストーリーを提供し続けます。

  3. 03

    それを現実にする

    各従業員は、職場や家庭で、日々ESGの優先事項に影響を受けています。しかし、心理的な距離がESGのコミュニケーションの妨げになることがあります(例:コンセプトが私たちの仕事や今日の問題とあまりにもかけ離れているように感じるなど)。従業員が関心を持ち、参加できるよう、現実的なものにするために何が必要かを理解しましょう。

  4. 04

    参加の障壁を下げる

    従業員が参加しやすいようにします。日々の小さな行動変容を、時間をかけて積み重ねていくような取り組みを始めましょう。このような活動には、次のようなものがあります:

    • 自社内のカフェテリアでプラスチックの調理器具を竹製のものへ置き換える
    • 社内カフェテリアの食器をプラスチックから竹製に変更する
    • コーヒーステーションに、再利用可能なマグカップを持参するよう、従業員に呼びかける
    • 持続可能性に焦点を当てた 従業員リソースグループ(従業員セグメント)づくりを提案する
    • 気候変動に関する誓約書へ署名する
    • すべてのデスクからゴミ箱を撤去する
    • DEIとウェルビーイング戦略を活性化する
  5. 05

    コミットメントを維持する

    業員と組織の両方にとって、透明性が高く正直な、長期にわたって維持できる「本物」の感情面でのつながりを醸成しましょう。そのために、次のような活動計画を立てます:

    • ESG目標/指標に向けた進捗状況を定期的に報告し、それが従業員にとってどのような意味を持つかを説明する。
    • 取り組みを継続させることにより、ESGを企業文化に有機的に根付かせる。
    • 全ての従業員向けコミュニケーション資料にESGメッセージを組み込み、浸透させる。
    • 従業員を巻き込み、ESGに関する会話を促進する
    • 行動を動機付け、成果を確認する

最後に

急速に変化する世界においては、企業が新たなトレンドとリスクを理解し、長期的な競争力を維持するための機会を特定し、優先順位をつけることが困難な場合があります。

ESG のレンズを通してビジネス戦略を見ることは、短期的なリスク管理に役立つだけでなく、長期的な競争優位性をもたらし、他の方法では見過ごされていた機会を発見することができます。ESGをEXに組み込むことで、新しい人材を獲得する際の差別化が可能となり、従業員に刺激を与え、従業員のエンゲージメントを維持し、最終的には従業員の力を活用して ESG の目標を達成することができるのです。

本記事は、WTWの海外に在籍するコンサルタントにより執筆された記事を和訳し、日本のコンサルタントによる見解を追加したものです。

執筆者


Consultant – Employee Experience

Lead Associate – Employee Experience

Consultant – Employee Experience

マネージングディレクター、EXインターナショナル・リーダー 兼 
タワーズワトソン株式会社 取締役
Employee Experience(EX)

マッキンゼー・アンド・カンパニーのコミュニケーション・スペシャリストを経て、WTW入社。従業員エンゲージメント、コミュニケーション、チェンジマネジメントなどの領域に20年以上のコンサルティング経験を持ち、寄稿・インタビューなど多数。EX(Employee Experience)ビジネスのInternational Geography(アジア・豪州、中東、中欧・東欧、南米)のリーダー。


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