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調査報告 | 企業リスク&リスクマネジメント ニュースレター

2023 ロジスティクス・サプライチェーン・リスク・レポート

2023年6月20日

WTWは、世界の主要な物流企業の幹部クラスの意思決定者100名を対象に、サプライチェーンのリスクと課題、リスクマネジメントに対する組織の取り組み、将来のサプライチェーンの姿について調査を行いました。
Credit and Political Risk||Facultative|Marine
N/A

混乱からの教訓

物流が止まるとほとんどのサプライチェーンが機能不全に陥ります。コロナ禍を通じて誰もがその事実に気づくことになりました。

通常の商業活動に次第に戻りつつある中で、あらゆる企業が、サプライチェーンのノード間における物資の移動と保管方法の改善や最適化を支援してくれる物流業者を探し求めています。

一方、物流業者自身も自社のサプライチェーンに関する課題に直面しています。例えば、労働力の問題、賃上げ要求の高まり、世界的な地政学的緊張と貿易摩擦、運輸の脱炭素化を求める圧力などが挙げられます。

物流企業の対応

物流セクターがこの変わりゆく状況をどのように乗り越えていくのかを明らかにするため、当社はリスク分野とサプライチェーン分野のリーダー100名に対して調査を実施しました。対象企業にはフォワーダー、海運会社、航空貨物業者、トラック会社などが含まれています。

これらの企業はサプライチェーンの展望をどのように見ているのでしょうか。レジリエンスの構築方法はどうでしょう。直面している主な課題とリスクは何なのでしょうか。そして、将来のサプライチェーンはどのようになるのでしょう。

波及効果により物流のリスク負担が上昇

どの業種でも物流はサプライチェーンの中核を成しています。したがって、物流セクターのリスクは何倍にもなることを意味します。

企業はサイバー攻撃や異常気象など自社事業の問題に対応する必要があるだけでなく、顧客への波及的影響や、それが自社にどのように跳ね返ってくるかについても考慮しなければなりません。

サイバーリスク

今回の調査では、サイバーリスクはサプライチェーンに最も深刻な影響を与える要因だと考えられており、回答者の58%が中程度の影響があると評価し、31%が大きな影響があると評価しました。

58% の回答者が、サイバーリスクはサプライチェーンに対して中程度の影響があると評価し、31%が大きな影響があると評価しました。

運送会社はパートナー企業や顧客との間でこれまで以上に多くのデータを共有するようになっていますが、物流チェーンにおけるこれら当事者の数だけ、相互にリンクしたシステムを利用するのが通常であるため、その数が増えればサイバー攻撃の標的となり得る脆弱なリンクも増えることになります。

物流企業やその顧客にとって配送の遅延は費用がかさむことになるため、それらの企業や顧客はランサムウェア攻撃の身代金を払う可能性が高いとサイバー犯罪者は考えているため、物流業界は魅力的な攻撃対象となっています。

気候と環境

回答者の約半数(47%)が、サプライチェーンリスクに影響を与えるグローバルなトレンドとして、温暖化と環境の要因を上位に選びました。

物流企業は顧客の排出量削減目標達成を支援しなければならないという強い圧力を受けています。

また、政府からも、全般的に運輸における排出量削減について圧力を受けています。

温暖化の影響は異常気象にも現れており、異常気象の頻発により物流混乱のリスクが高まっています。

製品の複雑化

サプライチェーンリスクに最も大きな影響を与える要因としてはこの項目が首位に選ばれました。回答者の35%が最も大きな問題だと回答しています。

これは、ますます専門分野に特化した慎重な取扱いを要する製品や原材料を輸送する際の問題を考慮していると考えられます。例えば、ライフサイエンス分野などで、遅延や破損に対して、より多くの契約上の補償を顧客が要求するようになっています。

今後3~5年におけるリスク対応の最大の課題

今後3~5年におけるリスク対応の最大の課題を示すデータテーブルです。このチャートはX軸でカテゴリーを表示しています。また、Y軸で値を表示しています。データの範囲は36~77です。
質問:リスク対応に関して、今後3年から5年において最も大きな課題となる点は以下の選択肢のうちどれですか?
回答者は上位3つを回答。

経済的リスク

サプライチェーンリスクの要因として第2位に選ばれたのは「経済的な不確実性」であり、回答者の30%が最も大きな問題だと回答しています。

物流セクターは、物価や賃金の上昇、不安定な燃料・エネルギーコスト、消費者需要の減退などのリスクに晒されています。

2023年末までにインフレ率がほぼ正常な水準に戻れば、このような圧力が多少は緩和される可能性があるでしょう。

地政学的リスク

サプライチェーンリスクに最も大きな影響を与えると考えられている要因の一つであり、回答者の54%が中程度の影響があると評価し、29%が大きな影響があると評価しました。

ウクライナ紛争によりアジアと欧州を結ぶ道路や鉄道の一部が不通となっているほか、シナ海でも緊張が高まっていることから、将来的には世界各地の輸送経路でさらに問題が生じる可能性があります。”

Charles W. McCammon | National Team Leader – Marine Risk Consulting and Claims Advocacy Group

ウクライナ紛争によりアジアと欧州を結ぶ道路や鉄道の一部が不通となっているほか、シナ海でも緊張が高まっていることから、将来的には世界各地の輸送経路でさらに問題が生じる可能性があります。

また、英国のEU離脱により複雑な書類作成が必要となったため、物流会社に対する通関ミスのクレームも増加しているようです。

オンショアリング

回答者の48%が、サプライチェーンリスクに影響を与えるグローバルなトレンドとして、「オンショアリングとニアショアリング」を上位に選びました。

自国に近い場所で製品を調達・製造する企業が増加すれば、世界各地まで輸送される物資は減少し、物流サービスに対する需要にも影響が生じると考えられます。

感染症の流行

コロナ禍による深刻な破壊的影響は過ぎ去ったものの、ウイルスの新型変異株によるリスク、または未知の新たな感染症の流行が発生するリスクは依然として人々の念頭にあるように思われます。サプライチェーンリスクに影響を与えるグローバルなトレンドとして、回答者の56%が「感染症の流行」を上位に選びました。

3つの重要な所見

63% の回答者が、過去2年間におけるサプライチェーン関連の損失が「予想を上回った」または「予想を大きく上回った」と回答しました。

85% の企業が、コロナ禍の対応でサプライチェーン管理の方法に少なくとも何らかの改善を加えたと回答しました。

77% の回答者が、リスク対応に関して、今後3年から5年において最も大きな課題の中で保険による補償の欠如を挙げました。

物流の輪を上手く利用する

物流会社はサプライチェーンのリスクをあらゆる角度から検討しています。自社のリスクだけでなく、サービスの提供先である企業のリスクも管理する必要があるためです。そのバランスをとることは容易ではありません。

サプライチェーンが混乱に陥るリスクは依然として高い上に、サービス提供、サステナビリティおよび契約上の義務に関する顧客の要求は増大しているため、こうした課題はますます増えていくと考えられます。

地政学的条件やサイバーセキュリティなど、外的要因の範囲が拡大するのに伴い、慎重なリスク管理の必要性は一段と高まっています。”

Charles W. McCammon | National Team Leader – Marine Risk Consulting and Claims Advocacy Group

地政学的条件やサイバーセキュリティなど、外的要因の範囲が拡大するのに伴い、慎重なリスク管理の必要性は一段と高まっています。

今回の調査では、各企業が問題の克服に取り組み、レジリエンスを高めるさまざまな戦略を検討していることが明らかになりました。

しかし、適切な保険によるソリューションが利用できないことや、リスク管理に必要となる正確なデータの入手が困難であることが、企業の取り組みを妨げています。

各企業は、顧客やパートナーとの連携を強化することにより、サプライチェーンに対する理解を深め、それらのリスクに対応することが可能になります。

物流チェーン全体や特定部分のリスクを可視化、定量化および評価するには、診断用のマッピングツールやモニタリングツール、およびアナリティクスが有効です。

WTWは経験豊富な専門家のチームを擁しており、各種のツールや能力をご提供して、お客様のサプライチェーンの脆弱性の把握や、業務運営の見直しを通じた財務リスクの低減をご支援しています。

また、資産関連の損失と純粋な経済的損失の両方について、お客様のリスク管理とリスク移転をご支援し、将来のショックに対するお客様の信頼性を高めるお手伝いも行っています。

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