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エネルギー・マーケット・レビュー2024(Energy Market Review 2024)

二つの保険マーケットからなる一つのストーリー: 広がりつつある保険条件のギャップを解説します。

執筆者 Graham Knight | 2024年6月3日

2024 年のエネルギー・マーケット・レビューは、全世界の上流、下流、国際賠償責任、および北米賠償責任に関するエネルギー保険マーケットの現状を分析します。
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2024年最初のエネルギー・マーケット・レビューへようこそ。

地政学上および経済的に不安定な期間に、エネルギー保険マーケットは、パワーバランスが再び買い手優位にシフトしながら、私たちのすべてに待望の安定性と確実性を提供する準備ができているようです。しかし、エネルギー・マーケットの状況を動かすさまざまな要因をさらに深く掘り下げてみると、マーケットは実際には保険マーケットからなる一つのストーリーであり、双方の間で保険条件のギャップが広がっていることがわかります。

2023 年の全エネルギー・セクターにおける事故動向は比較的良好だったことから、エネルギー保険マーケットは再び収益性を回復するとみられています。しかし、そうしたプラスの主要な数字は、多くの元受保険会社にとって特約再保険の免責条件が増加した2023年の再保険更改の本当の影響を伝えていません。実質的には、この結果、保険会社は自社の収益上さらに多くの通常損害を被っており、確かに2023 年には相当な割合を占めています。

それにもかかわらず、保険会社は、大部分の企業が利益を上げ続けているエネルギー・セクターから撤退する気配はなさそうで、あらゆるエネルギー事業に関する保険キャパシティーは安定しつつあるとはいえ、依然として豊富です。

保険会社が利用できるリスクと実績データの量が増加したことにより、保険会社は自社のポートフォリオ内で最も収益性の高い事業をより明確に把握できるようになりました。この新しくより深い洞察により、保険会社間のリスク・アペタイトが均質化し、大半の保険会社が同様の非常に望ましい「上位層」ビジネスを成長させようという強い推進力を持っています。

最高の企業とそれ以外の企業との間の望ましさの隔たりが拡大していることは、最も望ましいクライアントにとっては朗報であり、この上位層のビジネスに対する競争圧力により、2024 年を通じて保険料率の低下トレンドが進むことになるでしょう。しかし、これは小規模で望ましくない保険プレースメントにとってはあまり良いニュースではありません。 その場合、保険会社は、低廉な保険料ボリュームまたはリスク・エクスポージャーによって、魅力が低いとみなしている可能性があり、これらの保険プレースメントは最適なキャパシティーを得るために大きな課題に直面する可能性があります。

さらに、全世界のエネルギー保険マーケットのアペタイトを満たすのに十分な上位層のビジネスが存在しないため、クライアントはどの保険会社と足並みを揃えるかについて厳しい決定を下す必要があり、必然的に保険マーケットが「好ましい保険条件を持つ」と「持たない」に分裂するでしょう。

上位に来る保険会社は、最も広範なクライアント関係を構築し、新たなリスク・エクスポージャーに対応する関連保険商品を提供しながら、複数の保険種目にわたってクライアントを支援するでしょう。

これは長期的に、より小規模かつより専門性に特化した保険会社の撤退を招く可能性があります。こうした保険会社は広範な保険種目を提供できませんが、自社のポートフォリオを支えるために現在の上位層のビジネスからの保険料に依存しています。これは、小規模なクライアントやあまり望ましくない保険プレースメントに対しては、悪いニュースとなるでしょう。そうしたクライアントは、自社のプログラムを完成することができる小規模で専門性に特化した保険会社のキャパシティーに依存することが多いのです。これらのクライアントは、ブローカーと協力する必要があるでしょう。そこでの目的は、強力な保険マーケット・サポートと最適な条件を惹きつけ続けるために、自社の保険プレースメントを積極的に差別化する方法を見出すことです。

環境、社会、ガバナンス(ESG)への配慮は現在、保険会社の間で十分に理解されており、大部分の保険会社が除外ポリシーの適用のためにESGへの移行を通じてクライアントをサポートするパートナーシップ・アプローチを採用していることをうれしく思います。

保険会社はエネルギー・トランジションをサポートする準備を整えており、いくつかの保険会社は、複雑かつ複数のセクターや保険種目をまたがるソリューションを備えた、総合的なエネルギー・トランジション専用のサービスを設定しています。 保険会社は、例えば二酸化炭素回収・貯蔵や水素などのエネルギー・トランジション技術の導入によって生み出される新たなエクスポージャーに直面しているクライアントを熱心に支援しています。そしてこれらの新技術を再生可能エネルギーと並んで将来のポートフォリオ・ミックスの重要な要素の一つとみなしています。これらの新技術に関する保険料は、保険会社の現在のオイル・ガス・ビジネスの収入をやがて補ことになるでしょう。そうした収入は、クライアントの自己保有の増加、キャプティブ活用の拡大、合併・買収活動によって縮小の兆しを示しことになりそうです。

しかし、リスク・マネージャーは、自社の組織に対する日常的なリスクを超えて、将来のより長期的で新しいリスクを考慮する必要があります。エネルギー・トランジション、地政学上の進展、持続可能な資本、時事変化しているマクロ経済環境は、新しいリスクの考慮事項を生み出すだけでなく、既存のリスクの予期せぬ組み合わせに至らしめ、以前に予想されていた以上にビジネスに深刻な影響を与える可能性があります。

リスク・マネージャーは、定期的なホライズン・スキャニングを実施し、専門性を有するブローカーと協力して、あらゆる新しいリスクに迅速に対処することが重要です。これには、積極的なリスク・マネジメントを通じて、あるいは仲介業者や保険会社パートナーと協力して将来の吟味されたリスク移転や保有ソリューションを開発することが重要です。

今年のエネルギー・マーケット・レビューでは、当社の3つの中核エネルギー・マーケット(上流、下流、賠償責任)に影響を与える要因をさらに深く掘り下げます。同時に、卓越した新しいエネルギー・トランジション技術の一つとしてに二酸化炭素回収・貯留に焦点を当てながら、重要な新しいリスクのいくつかについて論じています。最後に、北米、南米、ドバイ、ノルウェー、シンガポール、中国といった当社の主要なハブからの保険マーケット・レビューを提供します。

当社は、このレビューが貴社にとって洞察力に富んだものであると感じていただければ幸いです。これらのトピックについてさらに詳しく議論したり、貴社のフィードバックをお聞きできることを楽しみにしております。


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