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特集、論稿、出版物 | 人事コンサルティング ニュースレター

エンゲージメント調査活用事例・
出光興産株式会社様

社員が主体となって課題を分析し、「やりがい」向上に取り組む

2024年10月16日

WTWのエンゲージメント調査は、毎年グローバルで1000万人、日本では60万人に実施されています。社内での調査結果の分析や施策の遂行による改善への取組、また社外に対する人的資本開示にも広く活用いただいている事例として、出光興産株式会社様をご紹介いたします。
Employee Experience
N/A

出光興産株式会社様は、自社の調査で4分の1の従業員がやりがいに懐疑的であったことをきっかけに、客観的な外部調査としてWTWエンゲージメント調査を2017年度に開始されました。

2019年度に昭和シェル石油株式会社との経営統合を経て、2023~2025年度の中期経営計画においては、人財戦略を経営戦略の根幹に据え、人財戦略のKPIとしてエンゲージメント調査の結果を活用しています。従業員のエンゲージメントを定量的かつ継続的に調査し、WTWのワークショップ等を通じて、従業員の皆様が自ら詳細に自部室の課題や強み・弱みを分析し、解決策を実施することで同社の事業および従業員の持続的成長につなげています。

今回は、同社の出光社員会(※)の皆様に、同社のエンゲージメント調査導入の背景と、エンゲージメント調査を起点とした人的資本価値最大化に関する取り組みについてお話をうかがいました。

(※)人財戦略を更に推進するため、会社から独立した一般社団法人として2024年4月に設立。役職者も含めた全従業員が主体的により良い会社・組織風土創りに参画するための「場」を提供し、個々のエンゲージメントや成長に繋げることを目的としている。本エンゲージメント調査も出光社員会が実施。


企業情報

出光興産株式会社 様

業種:石油元売り

従業員数:13,991名(連結、2024年3月31日現在)

事業内容:燃料油、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源の各分野において、様々な分野のパートナー・顧客との信頼関係をベースに、多様なエネルギーと素材の開発・製造・販売を手掛ける。

出光興産株式会社ロゴマーク
出光興産株式会社
  1. 01

    エンゲージメント調査を起点とした着実な改善

    従業員のやりがいを客観的・定量的に把握するため、WTWエンゲージメント調査を導入

    多様なエネルギーと素材の開発・製造・販売を手掛ける当社は、創業以来、人を中心とした経営を行っています。2017年にはエンゲージメント調査である「やりがい調査アンケート」を導入し、エンゲージメント調査を起点とした人的資本の最大化を図っています。調査目的は、従業員の「やりがい・相互信頼・一体感(≒エンゲージメント)」を定量的・継続的に分析し、他社との比較も通じて自社の強み及び弱みを把握することで、よりよい会社づくりにつなげることです。

    エンゲージメント調査導入のきっかけは、従業員の成長をさらに促進したいと考えたからです。調査導入以前は、人事部では全従業員に会社とのコミュニケ-ションツ-ルである「活動目標記録」を提出してもらい、上司との面談に活用していました。同記録は、従業員一人ひとりが自分の目標やキャリア希望、会社への要望などを記入するものです。中には「やりがい」に関する項目があり、「やりがいがある」と回答する従業員の割合は例年4分の3以上で推移していました。この割合は高い水準ではあるものの、残りの4分の1は「どちらともいえない」「やりがいを感じられない」と答えており、当社はそれを課題視していました。そこで、従業員の「やりがい」を定量的に測定できるツールを導入し、継続的にその変化を分析したり、他社と比較して、自社の従業員の「やりがい」を客観的に捉える必要があると考えました。

    「やりがい」を測定するエンゲージメント調査の導入に当たって、WTWを選んだ理由は、定量的かつ継続的に測れるツールであること、外部ベンチマークと比較して客観的に自社の立ち位置を把握できること、自社の目的に沿って独自の設問を設定できること、サーベイをクラウドサービスで実施できることなどが挙げられます。何よりもWTWの「持続可能なエンゲージメント」と当社が考える「やりがい」は非常に親和性があると感じ、2017年に導入を決定しました。

    エンゲージメント調査や「やりがい」が社内共通用語として浸透

    エンゲージメント調査の設問内容は、既存の企業理念や行動指針、経営ビジョンなどから言葉を紡ぎ、当社が考えるエンゲージメントを測定するものとしました。当社および国内外のグループ会社31社を対象に実施し、2024年は参加者の96%以上、約1万2000人の従業員が回答しています。

    このような高い回答率の背景には、様々な場面で経営陣や各部室長が調査の意義について話していることがあります。今では「やりがい調査」が社内の共通用語となり、各部室で調査を起点とし、主体的な課題解決が行われるようになりました。そうした場が増えることによって、回答者である従業員は、「自分たちが回答した意味がある」「回答結果が会社の変化につながる」という実感を持てているのでしょう。

    エンゲージメント調査結果をもとに従業員が主体的にPDCAサイクルを回す

    エンゲージメント調査の結果は、経営層およびアンケートに回答した全従業員にフィードバックしています。結果は詳細に分析し、具体的なアクションプランの策定・実行につなげて、アクションプランの成果を翌年の調査で確認するというPDCAサイクルを回しています。

    このPDCAサイクルにおけるポイントが、全社課題と各部室課題それぞれについて、その結果を分析し、具体的な改善活動につなげていることです。全社課題については、経営層に調査報告をした後、社員会が中心となって経営層に対し課題提起と提言を行い、対話を重ねながらアクションプランの方向性を決定していきます。各部室課題については、各部室の役職者と選任された委員が協働して課題を抽出し、部室内でヒアリングや追加アンケートによる深堀り等を行いながら、従業員の声を踏まえ具体的な施策を決定しています。この際、調査結果を読み解くための分析ワークショップや特定部室へのフォローアップといったWTWからの支援によって分析がより深まり、実効性のあるアクションにつながっています。またこのようなワークショップを何年も継続して実施することで、より多くの従業員が正しいデータの見方だけでなく、経験や考え方を持ち寄ることによる気づきや視野の広がりを得ることができ、組織全体として高度な課題分析や施策検討の視点を持つことができています。

    エンゲージメント調査の結果は、経営層およびアンケートに回答した全従業員にフィードバックしています。結果は詳細に分析し、具体的なアクションプランの策定・実行につなげて、アクションプランの成果を翌年の調査で確認するというPDCAサイクルを回しています。
    このPDCAサイクルにおけるポイントが、全社課題と各部室課題それぞれについて、その結果を分析し、具体的な改善活動につなげていることです。全社課題については、経営層に調査報告をした後、社員会が中心となって経営層に対し課題提起と提言を行い、対話を重ねながらアクションプランの方向性を決定していきます。各部室課題については、各部室の役職者と選任された委員が協働して課題を抽出し、部室内でヒアリングや追加アンケートによる深堀り等を行いながら、従業員の声を踏まえ具体的な施策を決定しています。この際、調査結果を読み解くための分析ワークショップや特定部室へのフォローアップといったWTWからの支援によって分析がより深まり、実効性のあるアクションにつながっています。
    調査を起点としたPDCAサイクル
  2. 02

    エンゲージメント調査をもとに、 組織全体で人的資本価値向上に取り組む

    役員報酬にも反映し、エンゲージメント調査を非財務 KPIとして活用

    当社は、2022年に策定した中期経営計画(2023~2025年度)において、事業構造改革投資と人的資本投資の両輪により事業ポートフォリオの転換を進めています。事業変革を推進する上で鍵となるのが、変革を実現できる人財の育成です。従業員の成長・やりがいの最大化が必要だと考え、2022年に企業理念やビジョンの浸透、体現度を表す「出光エンゲージメントインデックス」を新たに定めました。出光エンゲージメントインデックスは、エンゲージメント調査より算出し、中期経営計画において非財務目標のKPIの1つとして設定しており、結果は役員報酬にも反映されています。

    エンゲージメント調査は、導入当初、非財務目標としての利用を視野に入れていませんでしたが、エンゲージメントと経営戦略とのリンケージをより強めていきたいことに加え、人的資本の開示という社会の潮流もあって、設定しました。

    その結果の数値は、2022年度は67%、2023年度は69%、2024年度は70%と少しずつではありますが着実に改善しています。経営層が全国の支店や製油所、事業所を回り、従業員との対話に取り組んだり、従業員の一段高い成長に向けて各種キャリア施策を講じた成果と考えています。一方で、部室や年齢層等の違いにより結果に差が見られており、調査を通じて明らかになった属性ごとの違いをきめ細かく見極めて施策を展開していく必要があります。
    出光興産様 統合レポート2024(22ページ参照)

    新たに2つの組織を設立し、会社全体の成長へ

    エンゲージメント調査の結果から、企業理念の体現、組織への貢献、組織の垣根を越え変革に挑戦する人財を育成することが極めて重要だということが見えてきました。そこで人財戦略の三本柱の一つである「個々人の能力・個性の発揮」のさらなる実現に向けて、4月に「キャリアデザイン部」と「出光社員会」を設置しました。2つの組織はそれぞれ「個」の「自律的キャリア形成」推進による成長支援と「より良い組織風土づくり」に参画するための「場」を提供しています。「個」の支援に加え、「場」の強化にこだわるのは、一部の従業員だけが活躍していても、会社全体の成長にはつながらないからです。当社では「従業員一人ひとりが主役」という考え方から、全員参加型で成長できる組織風土を醸成し、一人ひとりの従業員が少しでも成長の実感が得られれば、それがトリガーとなり、さらに組織への貢献度が高まると考えています。この2つの組織と人事部門が一体となって、さらなる人的資本価値向上に取り組んでいきます。

WTW
エンプロイーエクスペリエンス部門 インターナショナル・リーダー 
岡田恵子のコメント:

出光興産株式会社様は継続した調査とワークショップの実施により、常に一定数の人材が、調査データの分析方法、データの見方に精通しているよう、調査を活用できる人材基盤を強化されている点において突出しておられます。

エンゲージメント調査を起点にPDCAサイクルを回して各施策を推進され、事業変革に伴う従業員の行動変容にも活用されています。加えて今年度は、出光社員会という、会社からも独立した組織を形成され、社員の視点と、会社の社員に対する施策(=投資)の効果を最大化されようという試みをされておられます。今後もご一緒させていただくのが楽しみです。

出光興産様事例(英語版)資料ダウンロード

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