世界の上位300の年金基金の運用資産総額は、2018年に0.4%減少したのとは対照的に、2019年は8.0%増加し19.5兆米ドルに達したことが、シンキング・アヘッド・インスティテュート(※ウイリス・タワーズワトソンのインベストメント部門の関連組織)による最新の世界の上位300の年金基金に対する調査『top 300 pension funds research』で明らかになりました。
国際的な資産運用専門誌である米国のPensions&Investmentsと共同で実施された本調査によると、上位20の年金基金の運用資産総額は同期間に8.1%増加したことがわかりました。なお、上位20の年金基金の運用資産総額がランキング全体の運用資産総額に占める割合は40.7%で、この割合は前年から変わっておりません。
本調査によると、上位20の基金の過去5年間の複利年間成長率は5.5%でした。これに対し、同期間の上位300基金全体の成長率は4.9%となっています。
シンキング・アヘッド・インスティテュートの共同創設者であるロジャー・アーウィンは、次のように述べています。
「全体的に世界の大手年金基金は、2018年に厳しい市場環境を経験した後、2019年に力強い回復を見せました。 しかしながら、このポジティブな結果は、現在年金基金が直面している自己資本規制に関する懸念や気候および社会問題といったESGの考慮への期待の高まりといった数々のプレッシャーを払拭できるものではありません。 言うまでもなく最も注目に値することとして、私達は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機の影響を目の当たりにしています。そして今後数か月の間、さらなる経済の不確実性が予想されることから、年金基金の理事会が取り上げるべき議題は過去に例がないほど複雑かつ悩ましいものになっています。」
「大手基金は通常、高度なベストプラクティスのガバナンスに基づいて、これらの複雑な議題を管理し、戦略の焦点がぶれることのないよう努めています。 現在の彼らの最優先事項の一つは、年金基金が一般的に他の業界に遅れをとっている分野であるデータとテクノロジーの力を活用することです。 新しいテクノロジーへの投資には多大なコストがかかりますし、データ管理は容易なものではありませんが、これらは人材、プロセス、情報といった要素を改善するための極めて重要な道具であり、今後どの基金が成功するかを左右するものとなるでしょう。」
上位300の基金のうち、2019年に確定拠出(DC)の資産額は9.2%増加しました。一方で、確定給付(DB)の資産額は7.1%の増加となっています。 DBは、調査対象となっている運用資産総額の64.2%に相当し、前年の64.7%と比較するとやや減少しました。また、地域別のDBのシェアは、同水準が維持されたアジア太平洋を除く他の全ての地域で僅かに減少となりました。DBは、北米とアジア太平洋でそれぞれ74%と65%を占めています。また、北米やアジア太平洋ほどではないものの、欧州においてもDBの比率は高いものとなっています(53%)。一方で、他の地域ではDCの比率が高く、特に中南米諸国では資産額の71%を占めています。
リザーブ・ファンド(注:国が将来の債務への対処に充てるための準備基金)のシェアは9.9%増加しました。
ハイブリッド型基金の資産(DB・DC両方の制度の性質を持つ基金)は11.7%増加しました。
政府系および公的部門の年金基金は、調査対象の運用資産総額の68.3%を占めており、上位300の年金基金のうち144の基金がこの種の基金に該当します。政府系の年金基金(ソブリン・ペンション・ファンド)は5.6兆米ドル、政府系の公的資金を運用する投資ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド。SWF)は、8.2兆ドルに上ります。
北米は、引き続き運用資産総額および基金数において最大の地域となっており、その運用資産総額は調査対象の全資産の43.8%を占めています。これにアジア太平洋(26.6%)と欧州(25.8%)が続きます。 アジア太平洋では、直近5年の成長率が年率7.0%となり、地域別では最大となりました。同期間の 北米と欧州の成長率はそれぞれ年率で5.1%と2.8%で、中南米とアフリカの基金の運用資産総額は2.6%の増加となっています。
ここ5年間で、新たに30の基金が上位300基金の仲間入りを果たしました。内訳を見ると、米国の10の基金がランキングから外れ、24基金が追加されたことで、米国の純増数(14)が最も大きいものになっています。 対照的に、同時期の純減数ではイギリスが最大となりました(4)。
上位300基金には、引続き米国の基金(142)が最も多くランクインしており、これにイギリス(23)、カナダ(18)、オーストラリア(16)、日本(13)が続いています。
上位20の基金の資産配分の加重平均を見ると、株式が最も多く(45.4%)、次いで債券(36.8%)、オルタナティブおよび現金(17.8%)となっています。加重平均を地域別に見た場合、北米と欧州の基金においては株式への配分が多くなっています(それぞれ43.9%と50.9%)。一方で、アジア太平洋の基金は債券への配分(51.7%)がかなり多くなっています。
2019年は、上位20の基金の顔ぶれに変更はありませんでした。
順位 | 基金名 | 国 | 総資産額 |
---|---|---|---|
1 | 年金積立金管理運用独立行政法人 | 日本 | $1,555,550 |
2 | Government Pension Fund | ノルウェー | $1,066,380 ¹ |
3 | National Pension | 韓国 | $637,279 |
4 | Federal Retirement Thrift | 米国 | $601,030 |
5 | ABP | オランダ | $523,310 |
6 | California Public Employees | 米国 | $384,435 |
7 | National Social Security | 中国 | $361,087 ¹ |
8 | Central Provident Fund | シンガポール | $315,857 |
9 | Canada Pension | カナダ | $315,344 ² |
10 | PFZW | オランダ | $243,839 ² |
11 | California State Teachers | 米国 | $243,311 |
12 | Employees Provident Fund | マレーシア | $226,101 |
13 | 地方公務員共済組合連合会 | 日本 | $224,006 |
14 | New York State Common | 米国 | $215,424 |
15 | New York City Retirement | 米国 | $208,458 |
16 | Florida State Board | 米国 | $173,769 |
17 | Employees’ Provident | インド | $168,095 ¹ |
18 | Ontario Teachers | カナダ | $159,666 |
19 | Texas Teachers | 米国 | $157,632 |
20 | ATP | デンマーク | $144,983 |
*米国の基金のデータは2019年9月30日現在
*米国以外のデータは注記の無い限り、2019年12月31日現在
1 推定値
2 2020年3月31日現在
シンキング・アヘッド・インスティテュートは、2015年1月に設立された非営利の運用調査及びイノベーションのためのグローバルな会員グループであり、運用業界を最終受益者の利益のために改善及び変化させていくことに取り組んでいる機関投資家のアセット・オーナー及びサービス・プロバイダーから構成されています。世界中に45のメンバーがおり、2002年に設立されたウイリス・タワーズワトソンのシンキング・アヘッド・グループをその前身としています。
ウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)は、企業に対するコンサルティング業務、保険のブローカー業務、各種ソリューションを提供する業務における、世界有数のグローバルカンパニーです。企業の持つリスクを成長の糧へと転じさせるべく、各国で支援を行っています。その歴史は1828年にまで遡り、現在は世界140以上の国と地域そしてマーケットに45,000人の社員を擁しています。 私達はリスク管理、福利厚生、人材育成などの様々な分野で、企業の課題に必要な解決策を考案・提供し、企業の資本効率の改善や、組織と人材の一層の強化を図ります。また『人材』『資産』『事業構想』の密接な関係性を理解し、企業を業績向上へと導きます。 ウイリス・タワーズワトソンは、お客様と共に企業の可能性を追求して参ります。
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