~世界を変え得る大手アセット・オーナー:業界上位ファンドがESG新時代の到来を告げる~
シンキング・アヘッド・インスティテュート(※ウイリス・タワーズワトソンのインベストメント部門の関連組織)の調査 によると、世界トップ100のアセット・オーナーの資産総額は、前年から6%増加し20兆米ドルの大台を超えることが明らかになりました。年金基金は引き続き最大のアセット・オーナーとして世界トップ100のアセット・オーナーの資産総額の60%を占めており、政府系ファンド(SWF)(32%)およびアウトソースCIO・マスタートラストの合計(7%)が続きます。
シンキング・アヘッド・インスティテュートの共同創設者であるロジャー・アーウィンは、「世界中のアセット・オーナーの資本総額の3分の1以上を占める世界トップ100のアセット・オーナーがその他の投資家や社会に与える影響は拡大しており、ますます重要なものとなってきています」と述べています。
本調査によれば、世界トップ100のアセット・オーナーは、自身の投資戦略において現実社会へのインパクトを与えようとするなどESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みやアクティブオーナーシップ(積極的株主行動)をより活用するうえで顕著な存在となっています。こうした投資戦略においては、加入者の見解の組み入れ、新たなベンチマークの採用、(TCFD[1] フレームワークやSDGs[2]を通じた)投資戦略のインパクトレポート、ポートフォリオ保有先における二酸化炭素排出の削減や低炭素経済への移行を下支える資産への投資、パリ協定に沿った気候変動に伴う移行戦略の策定と実施、といった多くの新たな要素が盛り込まれています。
ロジャー・アーウィンは以下のように述べています。「世界トップ100のアセット・オーナーの上位ファンドにおいては、リスク調整後リターンを損なうことなく金融システムの保護や気候変動などのシステミック・リスクへの対応に寄与する、いわゆるユニバーサル・オーナー戦略を推進しています。こうした活動は「ESG 3.0」と呼ばれるESG新時代にふさわしいものであり、環境や社会に対する現実社会へのインパクトを盛り込みながら受益者にとってより良い成果をもたらそうとする点において従来型のESG活動とは根本的に異なっています。」
本調査では、ユニバーサル・オーナー戦略は一社で取り組むものではなく、責任投資原則(PRI)やネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスといった業界団体を通じて取り組むことが必要となることや、アルファ(銘柄選択によるレラティブ・リターン)よりもむしろベータ(市場リターン)により長期的な財務的結果を改善することが指摘されています。
[1] TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース
[2] SDGs:持続可能な開発目標
この点についてロジャー・アーウィンは「運用ポートフォリオにおいて、パリ協定に適合した行動をとり2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を森林や海洋などの吸収分を差し引いて実質ゼロにしようとする意思を表明する国や企業の動向に倣う世界トップ100のアセット・オーナーは増加の一途をたどっています。こうした目標は非常に遠大であり、リスク、リターンのほかにインパクトという投資の3つ目の側面を明白に取り入れた新たな形での投資方針が必要となります。こうした三次元的な投資方針により現実社会へのインパクトとポートフォリオの成果の改善の双方が実現されるとすれば、必然的に極めて革新的なポートフォリオとエンゲージメント戦略につながります。」と述べています。
ウイリス・タワーズワトソンのインベストメント部門の日本のリーダーである木村倫啓は、運用機関と比較した場合のアセット・オーナーの相対的な影響力は、サステナビリティに関する強力なリーダーシップのもとで連携が広がること等により引き続き高まる、と述べています。「アセット・オーナーのガバナンスは改善しているものの、これまでは他の金融サービス機関に後れを取ってきました。グローバルに極めて巨大なアセット・オーナーの20社程度が、ガバナンスが良好で、優れた企業文化を有して、他社に対して変化をもたらす十分な影響力としてリーダーシップを発揮しているでしょう。アセット・オーナーに関して特にアジアではアジア市場特有の複雑性にも対処しながら成長を図るという課題を伴いますが、アセット・オーナーのビジネス・モデルや組織は徐々に進化しています。」
本調査はまた、アセット・オーナーが直面する課題について以下のようなものを挙げています。
順位 | 基金名 | 国 | 総資産額 | 分類 |
---|---|---|---|---|
1 | 年金積立金管理運用独立行政法人 | 日本 | $1,555,550 | 年金基金 |
2 | Government Pension Fund6 | ノルウェー | $1,066,380 | 年金基金 |
3 | China Investment Corporation | 中国 | $940,600 | 政府系ファンド |
4 | National Pension | 韓国 | $637,279 | 年金基金 |
5 | Federal Retirement Thrift4 | 米国 | $601,030 | 年金基金 |
6 | Abu Dhabi Investment Authority | アラブ首長国連邦 | $579,620 | 政府系ファンド |
7 | Kuwait Investment Authority1 | クウェート | $533,650 | 政府系ファンド |
8 | Hong Kong Monetary Authority Investment Portfolio1 | 香港 | $528,054 | 政府系ファンド |
9 | ABP | オランダ | $523,310 | 年金基金 |
10 | SAMA Foreign Holdings1 | サウジアラビア | $509,884 | 政府系ファンド |
11 | GIC Private Limited1 | シンガポール | $440,000 | 政府系ファンド |
12 | SAFE Investment Company1 | 中国 | $417,845 | 政府系ファンド |
13 | California Public Employees4 | 米国 | $384,435 | 年金基金 |
14 | Temasek Holdings1 | シンガポール | $375,383 | 政府系ファンド |
15 | National Social Security6 | 中国 | $361,087 | 年金基金 |
16 | Public Investment Fund/ Sanabil Investments3 | サウジアラビア | $320,000 | 政府系ファンド |
17 | Central Provident Fund | シンガポール | $315,857 | 年金基金 |
18 | Canada Pension2 | カナダ | $315,344 | 年金基金 |
19 | Qatar Investment Authority1 | カタール | $295,200 | 政府系ファンド |
20 | Mercer2 | 米国 | $260,467 | アウトソースCIO |
世界での順位 | 基金名 | 国 | 総資産額 | 分類 |
---|---|---|---|---|
1 | 年金積立金管理運用独立行政法人 | 日本 | $1,555,550 | 年金基金 |
3 | China Investment Corporation | 中国 | $940,600 | 政府系ファンド |
4 | National Pension | 韓国 | $637,279 | 年金基金 |
8 | Hong Kong Monetary Authority Investment Portfolio1 | 香港 | $528,054 | 政府系ファンド |
11 | GIC Private Limited1 | シンガポール | $440,000 | 政府系ファンド |
12 | SAFE Investment Company1 | 中国 | $417,845 | 政府系ファンド |
14 | Temasek Holdings1 | シンガポール | $375,383 | 政府系ファンド |
15 | National Social Security6 | 中国 | $361,087 | 年金基金 |
17 | Central Provident Fund | シンガポール | $315,857 | 年金基金 |
25 | Employees Provident Fund | マレーシア | $226,101 | 年金基金 |
26 | 地方公務員共済組合連合会 | 日本 | $224,006 | 年金基金 |
32 | Employees' Provident6 | インド | $168,095 | 年金基金 |
36 | Korea Investment Corporation | 韓国 | $157,300 | 政府系ファンド |
43 | AustralianSuper | オーストラリア | $129,095 | 年金基金 |
46 | Labor Pension Fund | 台湾 | $123,655 | 年金基金 |
51 | 全国市町村職員共済組合連合会 | 日本 | $109,053 | 年金基金 |
57 | Future Fund1 | オーストラリア | $99,800 | 政府系ファンド |
58 | 企業年金連合会1 | 日本 | $98,090 | 年金基金 |
85 | Tcorp | オーストラリア | $74,728 | 年金基金 |
86 | 国家公務員共済組合 | 日本 | $74,258 | 年金基金 |
89 | Nulis Nominees (Australia) Limited5 | オーストラリア | $72,200 | アウトソースCIO |
1 2020年6月30日現在
2 2020年3月31日現在
3 2020年1月31日現在
4 2019年9月30日現在
5 2019年6月30日現在
6 推定値
※注記の無い限り、データは2019年12月31日現在
シンキング・アヘッド・インスティテュートはアセット・オーナーを以下のように定義しています。
シンキング・アヘッド・インスティテュートは、2015年1月に設立された非営利の運用調査及びイノベーションのためのグローバルな会員グループであり、運用業界を最終受益者の利益のために改善及び変化させていくことに取り組んでいる機関投資家のアセット・オーナー及びサービス・プロバイダーから構成されています。世界中に45を超えるメンバーがおり、2002年に設立されたウイリス・タワーズワトソンのシンキング・アヘッド・グループをその前身としています。詳細はこちらのページよりご覧ください。
ウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)は、企業に対するコンサルティング業務、保険のブローカー業務、各種ソリューションを提供する業務における、世界有数のグローバルカンパニーです。企業の持つリスクを成長の糧へと転じさせるべく、各国で支援を行っています。その歴史は1828年にまで遡り、現在は世界140以上の国と地域そしてマーケットに45,000人の社員を擁しています。 私達はリスク管理、福利厚生、人材育成などの様々な分野で、企業の課題に必要な解決策を考案・提供し、企業の資本効率の改善や、組織と人材の一層の強化を図ります。また『人材』『資産』『事業構想』の密接な関係性を理解し、企業を業績向上へと導きます。 ウイリス・タワーズワトソンは、お客様と共に企業の可能性を追求して参ります。
ウイリス・タワーズワトソン
タワーズワトソン・インベストメント・サービス株式会社
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