【プレスリリース / 東京】 2021年3月4日(木) - シンキング・アヘッド・インスティテュートによる『2020グローバル・ペンション・アセット・スタディー(英語)』の最新調査結果によると、主要22ヵ国おける年金基金の総資産額は、パンデミックの影響があったものの、2020年末で52.5兆米ドルまでに増加し、年間増加率は11%となりました。
世界上位7ヶ国(オーストラリア、カナダ、日本、オランダ、スイス、英国、米国)の年金資産額は、前年と変わらず、主要22ヵ国の92%を占めています。米国は世界の年金資産の62%を占めており、引き続き最大の年金市場です。次いで日本と英国がそれぞれ6.9%と6.8%となり、中国、香港、インド、韓国も過去10年間で他の市場と比べて増加しています。
本調査によると、平均GDPに対する年金資産の割合は11.2%増加し、2020年末で80.0%と大幅に改善しました。これは1998年の調査開始以来の最大の年間増加率であり、2009年の世界金融危機後に記録された年金資産の回復と同水準となりました。通常の場合、このような改善は年金制度の強化を示唆していますが、今回の急激な増加は、多くの国のGDPに対するパンデミックの経済的影響も示しています。年金市場規模上位7ヶ国(以下P7ヶ国)においてこの傾向はさらに顕著であり、2020年の年金資産額の対GDP比率は20%増加し、前年の127%から147%になりました。
本調査はオルタナティブへのシフトが続いていることも示しており、世界の年金基金の資産配分における20年間の変化が見られます。2000年のP7ヶ国の年金資産のプライベート市場とその他のオルタナティブへの配分比率はちょうど7%に対して、2020年には26%に達しました。このシフトは、主に株式比率の減少(60%から43%に)から行われており、債券の比率は31%から29%にわずかに減少しました。P7ヶ国の足元の平均的な資産配分は、株式43%、債券29%、オルタナティブ26%、キャッシュ2%です。
上位7ヶ国のDC資産が総年金資産に占める割合は、2000年の35%から53%に増加したと推定されており、DCが世界年金の主流となってきています。過去10年間において、DC資産の8.2%の年間成長率に対して、確定給付(DB)資産は4.3%の遅いペースで伸びています。
オーストラリアは引き続きDB資産に対するDC資産の比率が最も高く、年金資産総額の86%がDC資産であり、一方で、日本(95%)、オランダ(94%)、英国(81%)は引き続きDB資産が圧倒的な割合を占めています。
シンキング・アヘッド・インスティテュートの共同責任者であるMarisa Hallは、「非常に激動の一年だったにも関わらず、年金基金は2020年も力強く成長し続けました。株式からオルタナティブへのシフトやDC制度の世界年金の主流化など、数十年にわたる継続的なテーマに支えられています。パンデミック進行中における経済的等の悪影響を乗り切った業界の回復力と健全性が、世界中の何十億人もの年金受給者にとって朗報です。ただし、このことが業界リーダー達が直面している一連の高まる課題を覆い隠すべきでなく、業界リーダー達は広範なステークホルダーからのニーズと要望に応えると同時に、年金受給者に財務上の安全性を提供し続けていくべきでしょう。」と述べています。
ウイリス・タワーズワトソン インベストメント部門の日本のリーダーである木村倫啓は次のように述べます。「日本を含むアジアでは、サステイナビリティ、スチュワードシップ、長期投資の分野で遅れをとっており、機会を逃しています。“ESG列車”が止められない勢いでペースを上げていることは明らかで、投資家が追いつくためには、各自の投資信念とより幅広いサステイナビリティへの意欲を投資戦略に組み合わせる必要があるでしょう。投資の世界では、従来の二次元の焦点であるリスクとリターンから、三次元のリスク、リターン、インパクトへ拡張するパラダイムのシフトが発生しつつあり、資本の相当な再配分が予想されます。」
シンキング・アヘッド・インスティテュートは、2015 年 1 月に設立された非営利の運用調査及びイノベーションのためのグローバルな会員グループであり、運用業界を最終受益者の利益のために改善及び変化させていくことに取り組んでいる機関投資家のアセット・オーナー及びサービス・プロバイダーから構成されています。
世界中に 40 を超えるメンバーが参加しており、2002 年に設立されたウイリス・タワーズワトソンのインベストメント部門のシンキング・アヘッド・グループをその前身としています。詳細はこちらのページをご参照ください。
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