【プレスリリース / 東京】 2023年6月12日(月) ― 世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)は、日本企業における社長、執行役員、従業員の報酬水準について、過去10年間の推移の調査を実施しました。
【分析の前提】
※ 役員(社長、執行役員)については各年の「経営者報酬データベース」における全参加企業の統計を使用。執行役員は当該データベースの「執行役員および執行役」格のデータを使用。報酬額はいずれも標準額を使用。上段が総報酬、下段が総現金報酬(基本報酬+年次賞与)の推移を示している。総報酬は、原則、総現金報酬にLTIを足し加えた額となっているが、一部企業において役員退職慰労金制度が存続されている場合は、単年度積み上げ額も加算している
※ 従業員(平均)については、役員と同じ母集団(ただし上場企業に限定)を対象に各社有価証券報告書に記載の平均年間給与を集計。当該数値は株式交付制度等の価値を含まないため、総報酬は分析対象外
過去10年間における役員と従業員の報酬水準の動きには差異が見られる。
社長の報酬水準は、50%ile値において過去10年間で20%以上の上昇が見られる。これはインセンティブ報酬の導入・拡大を背景に、報酬増額が広く行われてきた結果を表している。加えて、欧米並みの報酬水準を目指す一部の企業の影響もあり、90%ile値は10年前の2倍弱にまで上昇した。総現金報酬(株式報酬や中長期インセンティブを含まない)で見た場合にも、50%ile値において過去10年間で15%以上の上昇となっており、株式報酬を含めた中長期インセンティブの拡大のみならず、基本報酬や年次賞与においても着実に増額が進んできたことが見て取れる。
執行役員の報酬水準についても、社長ほどの上昇率は見られないものの、同様の傾向となっている。報酬改定や増額は、役員報酬という枠組みを一つの括りとして行われる傾向にある中で、執行役員もまた、報酬増額が広く行われてきたことが読み取れる。
一方で、従業員報酬については、いずれの%ile値においても10年前を上回るものの、その上昇幅は3~12%と限定的であり、役員の報酬水準の動きとは歴然とした差異が見られる。また、こうした差異は、役員の総現金報酬の動きと比較しても同様に見られることから、金銭報酬のみの比較においても、従業員報酬の増額ペースは役員報酬に劣後している状況といえる。
こうした差異が発生している要因の一つとして、役員報酬という論点が独立した形で、経営課題の一つとしてプライオリティを得てしまったことが考えられる。コーポレート・ガバナンス強化の潮流の中で、インセンティブ報酬の強化を中心とした役員報酬の増額が株主からの要請として取り沙汰された反面、従業員報酬がそうした要請に含まれることは少なく、一体的な課題として捉えられることが多くなかったことが背景にある。しかし、近年では、人的資本経営への注目度が高まる中で、従業員への投資についても、経営戦略を実践するための重要な経営課題の一つと捉えられている。企業全体を通じて経営戦略と人材戦略の連携を図るためには、役員、従業員のいずれについても、人的資本管理という一貫した枠組みの中で適切にモニタリングするとともに、状況に応じて具体的な施策を打ち出し、実践していくことが重要だ。
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