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開示規制強化初年度、取締役会の審議内容の開示において一定の具体性が認められる企業はTOPIX100構成企業の55%、実効性評価との関連性に課題

WTW(ウイリス・タワーズワトソン)調査結果

2023年8月2日

Executive Compensation
N/A

【プレスリリース / 東京】 2023年8月2日(火) ー 世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)は、取締役会(及び指名委員会・報酬委員会)の活動実績等の開示状況について、TOPIX100構成企業のうち新規制の対象となる3月決算企業82社の有価証券報告書を対象とした調査を実施しました。

《 調査の目的 》

取締役会の機能強化に向けて、株主・投資家の関心は、形式的な社外取締役の登用から、実効的な社外取締役の機能発揮へとシフトしています。そして、取締役会が社外取締役を中核として実効的に運用されているかどうかを、株主・投資家が評価できるようにするため、2023年3月期の有価証券報告書より、取締役会・指名委員会・報酬委員会の活動状況(「開催頻度(回数)」「具体的な検討(審議)内容」「個々の取締役又は委員の出席状況等」)の開示が義務付けられました。本調査では、開示規制強化初年度における、各社の開示状況等を調査・分析するとともに、今後の各社の取組の参考となるよう、具体的な事例を紹介することを目的としています[1]

※1 調査担当:WTW 経営者報酬・ボードアドバイザリープラクティス

《 調査結果ハイライト 》
WTW アソシエイトディレクター 厚母 拓朗
  • 取締役会の審議内容の開示について、一定の具体性[2]が認められる企業の割合は55%であったが、取締役会の取り組みや審議の前提となる「実効性評価」について記載している企業の割合は23%に留まった
    • 委員会の審議内容の開示については、報酬委員会が53%、指名委員会が42%であったのに対して、指名と報酬の両方を取り扱う一体型の諮問委員会は25%と相対的に低かった
  • 取締役会の「年間開催回数」は平均13、分布状況としても12が最も多く該当し平均と近似した
    • 各委員会については概ね平均7、対して分布状況としては、報酬委員会は7が最も多く該当し平均と近似したが、指名委員会は2、一体型の諮問委員会は3が最も多く該当しバラつきがあった
  • なお、「個々の取締役又は委員の出席状況」については、1~2社を除き、ほぼ全ての企業で記載があった

※2 一定の具体性の有無については、WTWの取締役会の実効性評価のフレームワーク(「法令順守とリスクマネジメント」「長期経営方針の監督」「CEO・経営幹部の監督」)に沿って、株主・投資家の投資判断に資するような内容が一定の網羅性を持って記載されているかどうかを基準に判断しました。

《 調査結果 》※具体的な開示事例はページ下部、資料ダウンロード上の開示事例(pdf)を参照。

取締役会の審議内容の開示について、一定の具体性※2が認められる企業の割合は55%であった。
委員会の審議内容の開示については、報酬委員会が53%、指名委員会が42%であったのに対して、指名と報酬の両方を取り扱う一体型の諮問委員会は25%と相対的に低かった。
図1:「具体的な審議内容」に関する記載有無の状況

【調査対象】
取締役会:TOPIX100構成企業のうち新規制の対象となる3月決算企業82社
指名(諮問)委員会および報酬(諮問)委員会:法定または任意の各委員会設置企業55社
指名・報酬諮問委員会:指名と報酬の両方を取り扱う一体型の諮問委員会設置企業24社

取締役会の取り組みや審議の前提となる「実効性評価」について記載している企業の割合は23%に留まった。
図2:「実効性評価」に関する記載有無の状況

【調査対象】
取締役会:TOPIX100構成企業のうち新規制の対象となる3月決算企業82社
指名(諮問)委員会および報酬(諮問)委員会:法定または任意の各委員会設置企業55社
指名・報酬諮問委員会:指名と報酬の両方を取り扱う一体型の諮問委員会設置企業24社

取締役会の「年間開催回数」は平均13回、分布状況としても12回が最も多く該当し平均と近似した。
各委員会については概ね平均7回、対して分布状況としては、報酬委員会は7回が最も多く該当し平均と近似したが、指名委員会は2回、一体型の諮問委員会は3回が最も多く該当しバラつきがあった。
図3:年間開催回数の分布状況

【調査対象】
取締役会:TOPIX100構成企業のうち新規制の対象となる3月決算企業82社のうち、年間開催回数を開示している80社
指名(諮問)委員会および報酬(諮問)委員会: 法定または任意の各委員会設置企業55社(全社開示あり)
指名・報酬諮問委員会:指名と報酬の両方を取り扱う一体型の諮問委員会設置企業24社(全社開示あり)

《 今後の課題 》 
WTW ディレクター 宮川 正康

取締役会の実効性向上に向けて、多くの投資家が課題に感じていることの上位3つは、取締役会全体の経験・専門性のバランスやジェンダー・国際性を含む「取締役会の多様性の確保」、社外取締役を中心とした指名・報酬委員会の活用を含む「社外取締役が機能発揮できる環境の整備」、および取締役会の諮問・委任機関である指名・報酬委員会を含む「取締役会の実効性評価」である[3]。そして、今般の開示規制強化の狙いは、こうした課題に対する企業の取り組み状況を株主・投資家が評価できるようにすることにある。

このような視点に鑑みれば、新しい開示規制に対応するにあたっては、取締役会及び指名・報酬委員会(以下、「取締役会等」という。)の機能発揮の状況を一体的に説明することを念頭において、「取締役会等の役割・構成」、および、「実効性評価の結果」と、これに基づく重要な経営課題への対応状況が分かるようなかたちで、「取締役会等の活動実績」を記載することが望ましい。また、社外取締役の機能発揮を目的とした「非公式の場での重要な経営課題に関する議論等」についても、あわせて記載する方法が考えられる。

今回の調査では、このような視点から(株主・投資家とのエンゲージメントを意識して)、前年の実効性評価の結果との関連性を示すかたちで、取締役会等の具体的な取り組みや審議内容を記載している企業は少なく、調査対象の約1割に留まる結果となった(e.g.東京エレクトロン、丸紅、リクルートHD)。株主・投資家のより深い理解や共感を得るためには、エーザイのように、特に重要な審議内容について、社外取締役である取締役会議長や指名・報酬委員長からのメッセージとして記載することも有効だろう。

※3 一般社団法人 生命保険協会「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート集計結果(2022年度版)」(2023年4月21日公表)参照

WTWについて

WTW(NASDAQ:WTW)は、企業に対し、人材、リスク、資本の分野でデータと洞察主導のソリューションを提供しています。 世界140の国と市場においてサービスを提供しているグローバルな視点とローカルな専門知識を活用し、企業戦略の進展、組織のレジリエンス強化、従業員のモチベーション向上、パフォーマンスの最大化を支援します。

私たちはお客様と緊密に協力して、持続可能な成功への機会を見つけ出し、あなたを動かす視点を提供します。

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2023年3月決算企業の開示例(取締役会等の活動実績、実効性評価) PDF 3.1 MB
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