【プレスリリース / 東京】 2024年9月6日(金) -- 世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)は、日米英独仏の5カ国における売上高等1兆円以上企業の社外取締役の報酬について調査を実施しました。
※個人別報酬額の開示情報より集計、日本のみ社外取締役の総額開示より一人当たりの平均報酬額を算定して集計
2023年度にかかる調査対象国における各企業の各国開示資料よりWTWのGlobal Executive Compensation Analysis Team(GECAT)が分析のうえ作成。なお、調査対象は以下のとおり:
※ 米国(Outside Directorを集計)、英国、ドイツ、フランス(それぞれNon-Executive Directorを集計)については、個人別報酬額および報酬の方針の開示情報を分析して集計。取締役会議長や筆頭等の役職を有さない社外取締役については、対象となる全ての個人別報酬額の平均値を算出し、1社につき1サンプルとして中央値を集計している。取締役会議長についてはその個人別報酬額の中央値を集計
※ 各国のデータサンプルにつき、在籍期間等により年額が得られないデータサンプルは異常値として集計上除外
※ 日本については、社外取締役報酬の総額開示より一人当たり平均報酬額を算出し、1社につき1サンプルとして中央値を集計
※ 円換算レートは2023年平均TTM(1ドル=140.56円、1ポンド=174.86円、1ユーロ=152.00円)
今年の社外取締役報酬は、中央値でみると総報酬(現金および株式報酬)水準が1,680万円から2.3%増の1,720万円となった(現地通貨ベース)。なお、日本企業のうち株式報酬を社外取締役に付与する企業は、10社(約12%)であり、昨年比で大きな変化は見られなかった。
近年、日本企業の社外取締役が企業価値向上に対してどのように貢献すべきかについて世間の関心が高まっている。また、日本企業がさらなる成長に向けて積極的なグローバル展開を図る上で、期待役割を十分に果たせる優秀な取締役人材を国内のみならず海外から獲得するニーズが高まるとも考えられる。この観点から、社外取締役の報酬水準・構成・ガバナンスについて、グローバルトレンドを意識しながら再考していく必要があるだろう。
報酬水準の観点からは、議長や委員長の役職を有さない社外取締役の現金報酬(中央値ベース)を見る限り、日本は既に米国と同等レベル、欧州と比較してもフランスを上回る水準に達しており、一定の競争力がある。一方で、取締役会議長・筆頭社外取締役・委員長の報酬については、欧米のプラクティスはその職責や役割の重さを反映した処遇となっており、また委員会等の参画・十分な貢献に必要な拘束時間に相応しい手当の支給も一般的だ。今後、日本企業のグローバル化にあたり、国内外から優秀な社外取締役人材を引き付けるには、こうした欧米プラクティスを踏まえた水準の再検討が必要とも考えられる。
報酬構成の観点からは、英国で一定程度(29%)適用され、米国においては一般的(99%)な株式報酬の導入事例は、日本企業でまだ少ない。社外取締役に対する株式報酬の付与は、株主価値との利害共有および中長期的な企業価値向上の意識醸成の効果を期待できるだけでなく、今後、非日本人の社外取締役を登用していくにあたっても有効な手段と考えられる。ただし、監督機能への影響や、機関投資家の議決権行使基準等[1]への配慮から、業績に連動しない株式報酬の導入が前提となるだろう。
また、社外取締役報酬の再検討と並行して、社外取締役の役割に関するガバナンスの整備が重要な論点となる。例えば欧米においては、取締役会および各委員会の役割や方針(Charter)が開示され、議長・委員長・筆頭社外取締役の責務や期待役割なども明確だ。また、個々の社外取締役の報酬水準や手当等の仕組についても詳細に開示されている。株主の付託者として特に高い説明責任が求められていることを認識することが重要だ。
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