発展途上国におけるプロジェクトもますます多くなっており、ポリティカルリスクが増加し、技術進化に伴うプロジェクト自体に変化が見られ、プロジェクトファイナンス案件の増加に伴うレンダー、海外企業との競争激化に伴うプロジェクトコストの削減や契約書における発注者(Owner/Employer)の要求水準も高まっているなど、海外プロジェクトを取り巻くリスク環境は受注者(Contractor)にとっては厳しさを増しています。
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プロジェクト契約とリスクの留意点
一般的には、業界・案件等により、以下の請負業務スコープを分割・統合した契約毎に入札が行われ、Contractor (個社・JV・コンソーシアム等)が決められていきます。
1) 業務スコープ
- 開発
- 設計(基礎設計・詳細設計)
- 建設・組立
- 試運転
- オペレーション&メンテナンス
それぞれの契約毎に特有のリスクがあり、EmployerとContractorでリスクを分担することになります。
FIDIC (The International Federation of Consulting Engineers) では、業界や請負業務スコープに応じた契約書フォームを公開しており、最も標準的な契約書のひとつとして世界的にも広く利用されています。各プロジェクトでは、これらを適宜修正して使用されていることも多く、その修正箇所や修正の意味が重要となります。また、これに添付されるSpecific ClausesやAppendixで詳細が規定されていますので、リスク負担とそのソリューションについては、これらを含めて検討することになります。
2) IndemnityとInsurance / Force MajeureとLiquidated Damages
上記General Clauses, Specific ClausesやAppendixのInsuranceの条項には付保するべき保険の種類、保険金額やてん補限度額等が規定されますが、これはあくまでも契約として保険を付すことが義務付けられている内容であり、Contractorに課される”Indemnity”とは異なります。
また、Indemnity条項とは別にForce Majeure条項が契約上に規定されていることが一般的です。時折、「Force majeure条項で責任がないと記載されているから、その部分についての保険は要らない」と聞くことがあります。Force Majeure条項は、Liquidated Damagesが発生しない天変地異を規定したものです。Force MajeureでもIndemnityは発動し、また、Insurance条項の規定に基づく保険の手配が必要となりますので注意が必要です。
3) OCIPとCCIP
旧来、海外プロジェクトの工事請負契約においては、Contractorが自ら付保するのが一般的でした(CCIP=Contractor Controlled Insurance Program)。
しかしながら、近年プロジェクトファイナンスが発達し、レンダーの要求でプロジェクト完成遅延に伴う逸失利益の保険(操業開始遅延保険 DSU=Delay in Start Up、ALOP=Advance Loss of Profit)の手配を要するケースが増えてきています。この保険は、通常、Employerの得べかりし利益を対象とするため、Employerを被保険者とする必要があり、建設工事保険(組立保険)とセットで引き受ける保険であり、結果、Employerが保険手配をする(OCIP=Owner Controlled Insurance Program)を要求する契約が、海外案件では標準となっています。また、複数の元請契約が発生する大型プロジェクトにおいても、煩雑さを避け、かつ保険料コストを削減する目的でOCIPが一般的となっています。
OCIPにおいて、Employer/Contractor双方が注意すべき点として、免責金額以下の損害を誰が負担するか、があります。保険の免責金額の如何に関わらずIndemnity条項に記載された責任限度額まではContractorの責任ですが、Employerが高額免責の保険を購入した場合、発生頻度の高い免責金額以下の小損害は、Contractorの負担となってしまいます。このような事態を避けるため、Contractorが独自に免責金額部分の保険を手配する事例も増えてきていますが、海外の保険会社では、リスクの最も濃い免責金額以下の部分だけの保険は引受ないのが一般的です。
4) Professional Indemnity Insurance (PI保険) とリスク負担の開始時期
欧米では、プロジェクトのコンサルティング会社・設計会社がPI保険を付すことは極めて一般的である一方、日系企業には最近まで馴染みのないものでした。従って、日系各社では、建設工事保険・組立保険(CAR/EAR)を工事開始前に付保する習慣はありますが、PI保険については、付保するべき時期に付保し忘れることのないように留意する必要があります。
Contractorのリスクは契約締結と同時に開始するのが通常です。開発を請け負うコンサルティング会社や、設計を請け負う会社にとってリスク負担は開発・設計に関する契約締結時ですので、付保するべき時期はCAR/EARよりも早い時期となります。それぞれに専門業者賠償責任保険(PI保険=Professional Indemnity Insurance)を請負契約締結のタイミングで付保していく必要があります。
PI保険は、プロジェクトマネジメント、土木・建築設計、建設監督、コンサルティング、アドバイザリー等の専門職業に関わる請負業務を遂行するにあたり、過失・過誤または不作為があり、その直接の結果として、発注者等の経済的な損害に対して法律上の賠償責任義務を負った際に次の損害をてん補するものです。
- 損害賠償金
- 請求の調査、防御または和解に関して必要となる費用 等
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WTWの「海外プロジェクトサービス」
弊社のサービススコープは以下に図示する通りです。本図は概要と流れを示すことを意図したものであり、サービスはこれにとどまるものではありません。期初に十分お客さまと相談の上、業務仕様書を定め、お客さまのパートナーとして協働しております。
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WTWのサービス体制
弊社では、地域セグメントと産業セグメントによるマトリックスの組織化をしています。
海外プロジェクトに関連しては、以下の専門チームを擁しています。
いずれも英国に本部を配置し、各極ハブ拠点・プロジェクト実施国及びウイリスジャパンサービス(日本)と連携し、案件ごとに最適なチームを組成してご対応しています。ウイリスジャパンサービスがお客さまのインターフェイスとしてチームを率います。
これにより、最新のリスク及び世界の保険事情に応じた最適な保険設計サービスを迅速にご提供しています。
< Industries >
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WTWの保険設計
弊社では、開発~操業後まで、以下をはじめとする保険について、設計して参ります。
- Contractor’s All Risks Insurance (CAR) / Erection All Risks Insurance (EAR)
- Third Party Insurance (TPL) / Corporate General Liability Insurance (CGL)
- Professional Indemnity Insurance (PI)
- Marine Cargo Insurance
- Delay in Start-up Insurance (DSU)
- Marine Cargo Advanced Loss of Profit (Marine ALoP)
- Worker’s Compensation Insurance (W/C)
- Employer’s Liability Insurance (ELI)
- Auto (Motor) Third Party Liability Insurance
- Hull Insurance
- P&I Insurance (Charterer’s Liability)
- Security Bond
- Product Liability Insurance (PL)
- Property All Risks Insurance
- Business Interruption Insurance (BI)
- Professional Risks (Directors and Officers Liability / Supplementary Legal Expenses)
- Political Risk
- Terrorism Insurance
- Expatriate and Local Employee Programs (Accident & Health、etc.)
その他、Operator’s Extra Expense Insurance (Blow Out Coverage)等、
詳しくは、こちらよりお問い合わせください。